【徹底検証!】地方公務員はiDeCoに加入すべきか?本当にメリットありますか?その1【まずは概略】
タイトルのとおり地方公務員がiDeCoに加入すべきか否かを検討します。
大まかな流れは下記のとおりです。
次回からこういった構成で書いていこうと思います。
この記事では今後の方針のための概略だけ記していきます。
iDeCoとは?
「個人型確定拠出年金」と言われます。
「確定拠出」は無視して、「個人型年金」という理解でいいと思います。
国民年金や厚生年金は誰かが運用してくれていますが、iDeCoは自分で運用します。
投資信託などで運用することが多いのではないでしょうか。
iDeCoのメリットは税優遇
どんな税優遇があるかと言うと、
デメリットは、鬼ホールド。
鬼ホールドと言うのは、長く持ち続けるという意味です。
iDeCoは原則解約できません。
一度持ったら、受け取り年齢まで保持し続けます。
iDeCoの受け取り年齢は60~75歳です。
iDeCoで退職所得控除が受けられないケース
退職所得控除の計算式は、下記のとおり。
退職所得控除額の計算の表
勤続年数(=A) 退職所得控除額 20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年) (略)
(例)
- 1 勤続年数が10年2ヶ月の人の場合の退職所得控除額
勤続年数は11年になります。
(端数の2ヶ月は1年に切上げ)
40万円×(勤続年数)=40万円×11年=440万円- 2 勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額
800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円
(出典:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁)
例えば22~60歳で勤続38年だと退職所得控除が2,060万円になります。
なので、退職手当が単体で2,060万円以上だと、iDeCoは退職所得控除が受けられません。
退職手当単体で退職所得控除の枠をすべて使ってしまって、iDeCoの分が残ってないというわけですね。
もし、退職所得控除が受けられないとしたら、iDeCoのメリットは薄くなってしまいます。
地方公務員は退職手当が高い
地方公務員の定年退職時の平均退職手当は約2,100万円と言われています。
(参考:地方公務員の退職金、平均でいくら? [定年・退職のお金] All About)
2,000万円超の退職手当を受け取るなら、iDeCoに残された退職所得控除の枠はない公算が高くなります。
地方公務員の定年延長によりiDeCoのメリットが復活?!
地方公務員の定年も60歳から65歳に引き上げられるようです。
(参考:地方公務員法の一部を改正する法律案の概要)
退職金の5年ルールというのがあります。
60歳でiDeCo受け取り、65歳で退職手当受け取りの場合に退職金の5年ルールが適用されるなら、iDeCoと退職手当がそれぞれ退職所得控除の対象になるかもしれません。
だとすれば、iDeCoのメリット税優遇が大復活の予感です。
懸念は……?
1.今後法改正がないか?
数十年後も退職金の5年ルールが維持されているか?
その保証はありません。
2.地方公務員の退職手当の金額
退職手当は、退職時の給料と過去5年にかかる調整額が対象。
役職定年制により退職手当がどうなる?
駆け足で概要だけ先に記事にしました。
次回からはこれらの詳細について記事にしたいと思います。
【わかりやすく解説!】「インボイス制度に関するQ&A」の解説その5~問19(適格返還請求書の交付義務)
いつも参考にさせていただいている
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
こちらを解説していきたいと思います。
こちらのQ&Aは適格で丁寧に説明してくれていて、とてもいいんですが、
- それでもわかりにくい
- 言い回しが難しい
- 分量が多すぎて読む気になれない
そんな声もありますので、さらにかみ砕いた解説をしていきたいと思います。
問1から順番に解説というわけではなく、特に重要そうなものからピックアップしていきたいと思います。
問19(適格返還請求書の交付義務)
返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格請求書発行事業者は、何か対応が必要ですか。【令和2年9月改訂】
【答】
適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務が課されています(新消法57の4③)。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問19(適格返還請求書の交付義務))
適格請求書ではなく適格返還請求書についてです。
適格返還請求書って何でしょう?
例えば、返品や値引きなどの場合、いったん商品を売ったけどお金を返すことってありますよね?
そういう場合に適格返還請求書が必要になります。
具体例でご説明しましょう。
[設例1]
- あなたが八百八と言う八百屋を経営していたとします。
- 農家のコロスケさんからトマト100個を仕入れました。
- あなたはコロスケさんにトマト代10,000円(1個100円)を支払いました。
- あなたがトマトを検品していたら10個のトマトが虫に食われて売り物にならないことがわかりました。
- あなたはコロスケさんに10個のトマトを返品しました。
- コロスケさんからトマト10個分の代金1,000円が返還されました。
- あなたもコロスケさんも適格請求書発行事業者です。
この場合、コロスケさんが適格返還請求書を交付する義務があります。
私は「返還」を「請求」するのは八百八の方なので、八百八が適格「返還請求」書を交付するのかと思っていたので、同じような勘違いをしている方は要注意です。
適格返還請求書は、「返還を請求する書類」ではなく、「いくらいくら返還しますよと記載された書類」と理解した方がいいかもしれません。
なお、適格請求書の交付義務が免除される場合と同じ場合であれば、適格返還請求書の交付も免除されます。
3万円未満の公共交通機関の場合などですね。
問39(適格返還請求書の記載事項)
適格返還請求書の記載事項について教えてください。
【答】
適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています(新消法57の4③)。
適格返還請求書の記載事項は、次のとおりです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
③ 売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問39(適格返還請求書の記載事項))
次に記載事項ですね。
これも決まっています。
ちょっとごちゃついてるので、記載事項を整理するとこうなります。
① 適格請求書発行事業者名と登録番号
② 販売年月日と返金した年月日
③ 何を売ったかその内容
④ 税率ごとに区分して合計した返金額
⑤ 返金額に係る消費税額等又は適用税率
こんな感じですね。
②販売年月日に関してはこんな問があります。
問40(売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日の記載)
適格返還請求書には、「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」を記載する必要があるとのことですが、日々、商品の返品が行われているため、個々の商品について正確な販売年月日を把握することが困難です。そのため、例えば、10 月中に返品を受けた商品は、前月である9月中に販売したものの返品として処理している場合には「9月末日」を、同商品について最後に販売したものの返品として処理している場合には「最終販売年月日」を、それぞれ「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」として記載することも認められるでしょうか。【令和元年7月追加】
どういうことかと言うと、Amazonとか大手の家電量販店をイメージしてください。
- 毎日返品がめちゃくちゃたくさんあります。
- 返品された日はわかりますが、販売日を把握するのは困難です。
- なので販売日は返品された月の前月の末日ということにしています。
- 認めてもらえますでしょうか。
毎日100件も200件も返品があったらとてもじゃないですが、さかのぼって販売日を特定するのは難しいですよね。
これに対する答え①がこちらです。
課税期間の範囲内で一定の期間の記載で差し支えありませんので、例えば、月単位や「○月~△月分」といった記載も認められることとなります。
課税期間さえ間違えていなければOKと言う感じでしょうか。
特定の日でなくて幅を持たせた期間でもいいよと言ってくれています。
次に答え②です。
他方、返品等の処理を合理的な方法により継続して行っているのであれば、当該返品等の処理に基づき合理的と認められる年月日を記載することとしても差し支えありませんので、ご質問のように「前月末日」や「最終販売年月日」を(略)記載することも、そのような処理が合理的な方法として継続して行われているのであれば、認められることとなります。
「合理的」で「継続して行っている」方法であれば前月末日で認められるとしています。
「合理的」と「継続」がポイントですね。
本日は以上になります。
お付き合いくださいましてありがとうございました!
【わかりやすく解説!】「インボイス制度に関するQ&A」の解説その4~問25(公共交通機関特例の3万円未満の判定単位)
いつも参考にさせていただいている
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
こちらを解説していきたいと思います。
こちらのQ&Aは適格で丁寧に説明してくれていて、とてもいいんですが、
- それでもわかりにくい
- 言い回しが難しい
- 分量が多すぎて読む気になれない
そんな声もありますので、さらにかみ砕いた解説をしていきたいと思います。
問1から順番に解説というわけではなく、特に重要そうなものからピックアップしていきたいと思います。
問25(公共交通機関特例の3万円未満の判定単位)
3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、どのような単位で判定するのですか。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問25(公共交通機関特例の3万円未満の判定単位))
まず前提からご説明しますね。
適格請求書発行事業者は、取引の相手方から交付を求められたとき、適格請求書を交付しなければならないと義務づけられていました。
ただし、適格請求書の交付が難しい場合、この交付義務が免除されます。
そんな例外的な取引がいくつか規定されていました。
その交付義務が免除される取引のうちの一つが、「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」でした。
問25の質問はこのことについて尋ねているんですね。
言い換えるとこうですね。
3万円というのはどんな範囲で考えればいいですか?
どんなくくりで3万円を判定すればいいですか?
その答えがこちらですね。
1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します(インボイス通達3-9)。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することにはなりません。
1回の取引が単位だと言っています。
切符1枚ごとではないと明記されていますね。
ということは、例えば、新幹線に乗るときに乗車券と特急券別々に発行されたとしてもその合計額で3万円未満かどうかを判断するということですね。
さらに具体例がQ&Aに記載されています。
【具体例】
東京‐新大阪間の新幹線の大人運賃が 13,000 円であり、4人分の運送役務の提供を行う場合には、4人分の 52,000 円で判定することとなります。
これは盲点かもしれません。
例えば、出張で4人の社員が東京‐新大阪間を新幹線で移動したとします。
この場合、1人あたりの料金が3万円未満であっても、4人の合計額で3万円未満か判断します。
この場合だと適格請求書の交付が必要ですね。
極端な話、近距離の移動でも、1人あたり300円で100人が出張したら、適格請求書が必要になります。
なお、特急券の話が出たのでこれに関連して問26もご紹介します。
問26 特急列車に乗車するために支払う特急料金や駅構内に入場するために支払う入場料金は、公共交通機関特例の対象になりますか。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問26(特急料金・入場料金))
これに対する答えとしては、以下のとおりです。
ついでに問24もご紹介します。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問24(公共交通機関特例の対象))
こちらに対する回答が以下のとおりです。
- 「① 船舶による旅客の運送」(問24)
- 「② バスによる旅客の運送」(問24)
- 「③ 鉄道・軌道による旅客の運送」(問24)
飛行機は含まれませんのでご注意ください。
本日は以上になります。
お付き合いくださいましてありがとうございました!
【わかりやすく解説!】「インボイス制度に関するQ&A」の解説その3~問63(任意組合の構成員が保存しなければならない請求書等)
いつも参考にさせていただいている
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
こちらを解説していきたいと思います。
こちらのQ&Aは適格で丁寧に説明してくれていて、とてもいいんですが、
- それでもわかりにくい
- 言い回しが難しい
- 分量が多すぎて読む気になれない
そんな声もありますので、さらにかみ砕いた解説をしていきたいと思います。
問1から順番に解説というわけではなく、特に重要そうなものからピックアップしていきたいと思います。
問63(任意組合の構成員が保存しなければならない請求書等)
当社は、取引先数社と任意組合を組成し、イベントを行っています。現行、仕入先から交付される請求書等は、幹事会社が保管し、当社を含めた構成員は、幹事会社から精算書の交付を受けています。
適格請求書等保存方式においては、構成員である当社も仕入先から適格請求書の交付を受け、保存する必要がありますか。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問63(任意組合の構成員が保存しなければならない請求書等))
いきなり「任意組合を組成し」とか言われてびっくりしてしまいましたね。
耳慣れない言葉を見るとと思わず逃げ出したくなりますが、ここはぐっとこらえましょう。
大したことないですからw
全然難しくないです。
何なら「任意組合を組成し」を「コラボって」に置き換えてもいいでしょう。
「当社は、取引先数社とコラボって、イベントを行っています。」
どうですか?
もっと簡単に「一緒に」にしましょうか。
「当社は、取引先数社と一緒に、イベントを行っています。」
こんなふうに難しい言葉や聞きなれない言葉が出てきても、落ち着いて対処することが大切です。
質問を要約すると、
- 複数の会社でコラボってイベントをしています。
- そのコラボは、リーダーである幹事会社とその他の構成員とで組織されています。
- 当社は構成員です。
- 仕入にかかる費用は、いったん幹事会社が代表して支払います。
- 当社(構成員)は、幹事会社からの精算書を受けて、幹事会社にお金を払って精算しています。
- 仕入先からの請求書は幹事会社が保管しています。
- 幹事会社への精算なので、当社は仕入先から請求書をもらっていません。
- 仕入先から適格請求書をもらうべきでしょうか?
こういう質問ですね。
とどのつまり、立替払いですね。
例えば飲み会などでも、幹事がとりあえず一括して支払いを済ませて、レシートを見せて「ひとり5,000円ねー」とか言って他の人からお金を徴収することってよくありますよね。
それと同じことですね。
個人間であればお金を払ってしまえばそれでおしまいですが、会社となるとそうもいきません。
お金を払った後、消費税の計算をしないといけませんから。
インボイス制度が始まってしまうと、「適格請求書もらってないけど、これは仕入税額控除できるの?税務署に指摘されない?」と不安になってしまいます。
これに対する回答がこちらです。
幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピーに各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る対価の額の配分内容を記載したものは、貴社及びその他の構成員における仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当するものとして取り扱われますので、その保存をもって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになります。
幹事会社からの精算書に適格請求書のコピーをつけてもらえればオッケーですよと言ってくれています。
「いやいや、コラボしてる会社がたくさんありすぎてコピー無理やねん」
こういうケースもあるかも知れません。
こういうケースに対する回答をくれています。
適格請求書のコピーが大量となる等の事情により、立替払を行った幹事会社が、コピーを交付することが困難なときは、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書を保存し、精算書を交付することにより、貴社は幹事会社が作成した(立替えを受けた構成員の負担額が記載されている)精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができます(インボイス通達4-2)。
結論としては、精算書の保存だけで仕入税額控除できるよ、と書いてあります。
もちろん幹事会社には仕入先からの適格請求書を保存してもらいましょう。
ただし、下記の事項を明らかにしないといけません。
- 仕入税額控除ができるか(相手方が適格請求書発行事業者なのか)
- 適用税率ごとに区分すること
仕入税額控除の計算をするにあたって必要な事項ばかりですね。
また、帳簿をつける際には「仕入れの相手方の氏名又は名称の記載が必要」ですので、ご留意ください。
想定できるケースとしては、複数の仕入先からの費用をまとめて精算する場合に注意が必要です。
例えば
- 幹事会社1社と構成員2社とコラボってイベントを開催するとします。
- 費用は、出資額に応じて、
幹事会社:構成員:構成員=2:1:1
の比率で配分するとします。 - 幹事会社は、仕入先A社へ50万円、B社へ30万円、C社へ20万円支払ったとします。
当社が構成員のうちの1社としたら、精算はとりあえず幹事会社に25万円支払うことで間違いないと思います。
でも、支払いが終わって安心してはいけません。
それだと個人間の飲み会の精算と同じです。
この25万円の内訳がわからないと仕入税額控除できなくないですか?
まず、A社B社C社のすべてが適格請求書発行事業者かどうかわかりませんよね?
支払った100万円のうち食料品など軽減税率の対象品目がいくらあるのかもわかりません。
こういった事項を幹事会社と構成員の間でハッキリさせておくというのが大事になってきます。
本日は以上になります。
お付き合いくださいましてありがとうございました!
【わかりやすく解説!】「インボイス制度に関するQ&A」の解説その2~問66 (見積額が記載された適格請求書の保存等)
いつも参考にさせていただいている
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
こちらを解説していきたいと思います。
こちらのQ&Aは適格で丁寧に説明してくれていて、とてもいいんですが、
- それでもわかりにくい
- 言い回しが難しい
- 分量が多すぎて読む気になれない
そんな声もありますので、さらにかみ砕いた解説をしていきたいと思います。
問1から順番に解説というわけではなく、特に重要そうなものからピックアップしていきたいと思います。
問66 (見積額が記載された適格請求書の保存等)
当社では、水道光熱費など検針等に一定期間を要し、課税仕入れを行った課税期間の末日までに支払対価の額が確定しない課税仕入れについては、対価の額を見積もることにより仕入税額控除を行っています。適格請求書等保存方式の下においては、このような見積額による仕入税額控除の取扱いはどのようになりますか。【令和元年7月追加】
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問66 (見積額が記載された適格請求書の保存等))
こちらが問66なんですが、私はどういう意味かわからなくて戸惑いましたw
いったい何を問うてらっしゃるんだろう?
まずはそこからお話を進めていきますね。
光熱水費は使用期間と支払時期がズレることがよくある
皆さんは電気代や水道料金の請求の流れについてご存じですか?
「たまに郵便受けに『検針のお知らせ』ってレシートみたいな紙が入ってるよ。そこに金額が書いてあるなあくらいしか覚えてないよ」
読まずに捨ててる人も少なくないと思いますがw
まずは、電気や水道の検針から請求までのフローについてです。
検針って何かというと、電気メーターや水道メーターを見てその家がどれだけ電気や水道を使ったかを調べることですね。
使った量に応じて金額が決まり、後に請求されます。
つまり
検針→金額決定→請求
こういうフローですね。
ちなみに検針の周期は把握されてますでしょうか?
毎月検針というところが多いと思いますが、地域によっては2か月に一度の検針というところもあると思います。
例えば、こんなケースが考えられます。
- 水道の検針が2か月に1度で、奇数月15日に検針しているとします。
- 5月15日に検針があったとしたら、それは前回の検針(3月15日)から2か月分の使用量を測定しています。
- この使用量により「5月分水道料金」が決定します。
- 「5月分水道料金」の請求書は6月1日に発送されるものとします。
ここでポイントは、使用した期間と支払の時期がズレるということです。
ここで、会計期間が4月1日~3月31日だったとしましょう。
今、上の例で「5月分水道料金」とした料金は3月15日から5月15日の間に使用した水道なので、厳密にいえば会計期間をまたいだ料金なんですね。
税金は会計期間ごとに計算をしますので、3月15~31日は前の年度の仕入れ、4月1~5月15日は次の年度の仕入れというふうに「5月分水道料金」を分けるべきなのです。
この場合、適格請求書が届くのは6月1日なので、これを待っていては消費税の確定申告に間に合いません。
(法人の場合、消費税の「申告期限及び納付期限は、原則課税期間の末日の翌日から2月以内です」(申告と納税|国税庁)ので、この場合だと3月31日から2か月が期限になります。)
こういった場合どうしたらいいでしょう?
その答えが国税庁「消費税基本通達」に載っています。
11-4-5 事業者が課税仕入れを行った場合において、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日までにその支払対価の額が確定していないときは、同日の現況によりその金額を適正に見積もるものとする。この場合において、その後確定した対価の額が見積額と異なるときは、その差額は、その確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額に加算し、又は当該課税仕入れに係る支払対価の額から控除するものとする。
(出典:消費税法基本通達 第4節 課税仕入れに係る支払対価の額|国税庁)
つまり、 3月15~30日の分を「適正に見積」もって、その後請求書が届いたら、残りの金額は次の会計期間の仕入れとしていいよということが書いてあります。
*ただし、実務上、使用期間にかかわらず支払い日が属する会計期間の仕入れとしても問題ないと認められる場合があります。
問66は、このような「見積額で仕入れとするパターン」はインボイス制度が始まったらどうなりますか?という質問だったのです。
これに対する回答が2種類用意されています。
① 見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合
「適格請求書がなければ交付してもらえばいいじゃない!」
というのが回答①ですね。
交付してもらえばいいのです、適格請求書発行事業者は交付する義務があるのだから。
かと言って、いちいち交付をお願いするのも面倒だし、相手方の手を煩わせるのも気が引けます。
そういう場合は回答②です。
② 見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合
電気・ガス・水道水の供給のような適格請求書発行事業者から継続して行われる取引(注)2については、見積額が記載された適格請求書や仕入明細書の保存がなくとも、その後、金額が確定したときに交付される適格請求書を保存することを条件として、課税仕入れを行う事業者が課税期間の末日の現況により適正に見積もった金額で、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
要するに適正な見積りでオッケーと言ってます。
一応2つ条件があって
- 継続して行われる取引であること
- 金額が確定したときに交付される適格請求書を保存すること
2.はわかりますね、適格請求書を保存しましょう。
1.については、電気・ガス・水道水のほかにどんなケースが該当するのでしょうか?
回答の(注)2に書かれています。
2 このほか、例えば、機械等の保守点検、弁護士の顧問契約のように契約等に基づ
き継続的に課税資産の譲渡等が行われ、金額が確定した際に適格請求書の交付を受
ける蓋然性の高い取引がこれに該当します。
機械等の保守点検、弁護士の顧問契約のようなものが継続的な取引と認められるようです。
ちゃんと契約書と取り交わしていれば認められそうな気がしますね。
本日は以上になります。
お付き合いくださいましてありがとうございました!
【わかりやすく解説!】「インボイス制度に関するQ&A」の解説その1~問65 (口座振替・口座振込による家賃の支払)
これまでちょくちょく引用していた
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
こちらを解説していきたいと思います。
こちらのQ&Aは適格で丁寧に説明してくれていて、とてもいいんですが、
- それでもわかりにくい
- 言い回しが難しい
- 分量が多すぎて読む気になれない
そんな声もありますので、さらにかみ砕いた解説をしていきたいと思います。
問1から順番に解説というわけではなく、特に重要そうなものからピックアップしていきたいと思います。
問65(口座振替・口座振込による家賃の支払)
当社は、事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っています。不動産賃貸契約書は作成していますが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳に口座振替の記録が残るだけです。このような場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問65(口座振替・口座振込による家賃の支払))
口座振替で支払いをしているために、適格請求書が交付されていないという状況ですね。
こういうことはよくあると思います。
この問65の場合は家賃ですが、この他電気・ガス・水道・電話料金などを口座振替で支払っているところも多いのではないでしょうか。
口座振替で支払ってしまうと、請求書はもちろん領収書も手元に残らないということが起こります。
インボイス制度では、仕入税額控除の要件として適格請求書の保存がありました。
このままでは仕入税額控除できないの?!
どうしたらいいのでしょうか?
適格請求書を交付する義務
まずひとつ考えられるのは、適格請求書発行事業者に適格請求書の交付を求めることです。
問65でいうと事務所の家主に「適格請求書を発行してちょうだい!」とお願いするのです。
適格請求書発行事業者には「取引の相手方の求めに応じて、適格請求書を交付する義務」というのがありますので、これを断ることができません。
このことがQ&Aにこのように書かれています。
適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
(出典:問65)
この中で一定期間の取引をまとめて交付ということも書いてくれてますので、毎月毎月「適格請求書を発行してください!」というのも煩わしいので、会計期間ごとに発行をお願いするのがよいのではないでしょうか。
複数の書類による対応
適格請求書の定義についておさらいしましょう。
ひとつ目、適格請求書とは、適格「請求書」と言いながら、請求書のみを指すものではありませんでした。
適格請求書には、納品書や領収書その他これらに類する書類を含みます。
ふたつ目、適格請求書の要件として、以下の事項を記載しないといけません
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤ 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
(出典:消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂))
ただし、一つの書類のみでこれを満たす必要はなく、複数の書類を組み合わせて記載事項を満たせばオッケーです。
問45にこのように明記されています。
適格請求書とは、必要な事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいますが、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載する方法など)で交付されていれば、これら複数の書類に記載された事項により適格請求書の記載事項を満たすことができます(インボイス通達3-1)。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問45(複数書類で適格請求書の記載事項を満たす場合の消費税額等の端数処理))
ここにも書かれているように、複数の書類を駆使する場合、それら「複数の書類相互の関連が明確」であることが条件になります。
どういうことかと言うと、例えば
- 納品書と請求書を組み合わせて適格請求書の記載事項①〜⑥までを満たそうと思っています。
- 請求書には、
①事業者名と登録番号
②取引年月日
④対価の額及び適用税率
⑤消費税額
⑥相手方名
が記載されています。 - 一方納品書には、
①事業者名と登録番号
③取引内容
⑥相手方名
が記載されています。 - 確かに請求書と納品書を合わせれば、記載事項①〜⑥を満たせそうです。
- ここに税務署から職員の方が来られて、この請求書と納品書を見たところ、「この2つの書類は本当に一体のものですか?別の取引のものではないですか?」と聞かれました。
- 経理担当者はグッとのどを詰まらせましたとさ。
「複数の書類相互の関連が明確」であることとは、こういうことなんですね。
誰が見てもこの書類とこの書類は一体のものだということがわかるようにしておく。
問45には「例えば、請求書に納品書番号を記載する」と方法の例示までしてくれてます。
口座振替で支払った場合、複数書類を組み合わせて適格請求書とする方法
問65の口座振替に話を戻します。
問65から引用します。
ご質問の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を 併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
口座振替で支払った場合でも、契約書と通帳を組み合わせて適格請求書とする方法を示してくれています。
もう契約書に記載事項の②取引年月日以外は書いてしまうわけです。
取引年月日は要するに支払い日になりますから、契約書にたとえ支払予定日は書けても、実際の取引年月日は書けないですからね。
では取引年月日はどうするか?
通帳に記載されていますので、それを利用します。
これで契約書と通帳で記載事項が満たされたことになります。
あとは「複数の書類相互の関連」をどのように明示するかですが、これについてはQ&Aには載っていません。
なので個別に考えないといけません。
「複数の書類相互の関連が明確」であることは、いったいどこまで何をすれば認められるんでしょうか?
契約書と通帳のケースだと、契約書に金額と引き落とし日が書いてあって、通帳を見ればだいたいその日にその金額の引き落としがあることがわかれば、それでいいのでしょうか?
なお、インボイス制度が始まっていない現行の制度では、「請求書等の交付を受けられなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」に該当するとして、「帳簿には、やむを得ない理由として「口座振替のため」等と記載することで差し支えありません。」としております。
(参考:家賃を口座振替により支払う場合の仕入税額控除の適用要件|国税庁)
要するに「請求書がもらえなかったので、帳簿にその旨を書くだけでいいよ」と、そう書いてあります。
私も勉強不足で断定的な言い方はできませんが、インボイス制度が始まってから、どのラインが妥当か、現行と同じような扱いなのか、いずれ決まっていくものと思います。
口座振込の場合では?
問65から続いて引用します。
また、口座振込により家賃を支払う場合も、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
私は口座振込と口座振替の区別がつかなくて、一定時間混乱しましたw
皆さまはいかがでしたか?
- 口座振替=定期的に自動でお金が引き落とされること
- 口座振込=1回こっきり単発で他人の口座にお金を振り込むこと
ですよ。
先ほどは、口座振替で毎月家賃が引き落とされるケースについてでした。
今度は家主の口座にお金を振り込むケースです。
このケースも適格請求書は発行されていませんね。
Q&Aでは、口座振替と同じように、契約書と「銀行が発行した振込金受取書」とを組み合わせて適格請求書とすることを例として挙げています。
「振込金受取書」とは、窓口で支払ったときにもらう領収書のようなものです。
契約書と振込金受取書を合わせて保存するのは、現行でも同じような扱いですね。
(参考:賃料を口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件|国税庁)
窓口なら領収書がもらえますが、ATMならどうでしょう?
「ご利用明細」のようなレシートみたいなものはもらえますね。
インターネットバンキングで振り込んだ場合はどうなるのでしょう?
「ご利用明細」は画面上に表示されるかもしれませんが、画面を印刷するのでいいのでしょうか?
私も勉強不足で確固たる答えは持ち合わせておりませんが、今後の課題としたいと思います。
それでは本日は以上です。
お付き合いいただきましてありがとうございました。
【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その8
インボイス制度とやらの導入が間近に迫っているとは聞いたもののよくわからない。。。
「インボイス」で検索したら国税庁のHPに行き当たったが、読んでも理解できない。。。
国税庁も周知のために親切にリーフレットをPDFで配布してるけど、リーフレットも難しい。。。
そんな方のためにリーフレットの解説をしています。
どんなリーフレットを解説しているかというとこちらです。
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)
そんな解説もこれで8回目になります。
長丁場になっていますが、このリーフレットの解説もようやく最終回です。
(過去記事)
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その1 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その2 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その3 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その4 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その5 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その6 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その7 - 知ラナイモノが多すぎる
前回に引き続いて、リーフレット4の頁目「5 税額計算の方法 」の解説から始めたいと思います。
よろしくお願いします。
5 税額計算の方法
令和5年 10 月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算は、次の①又は②を選択することができます。
① 適格請求書に記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」
② 適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」
ただし、売上税額を「積上げ計算」により計算する場合には、仕入税額も「積上げ計算」により計算しなければなりません。なお、売上税額について「積上げ計算」を選択できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。
まず、
- 積上げ計算
- 割戻し計算
というワードが出てきました。
ニューワードですね。
標題から消費税の計算方法だろうな、というのは予想がつきます。
どういう計算方法なんでしょうか?
積上げ計算と割戻し計算
Q&Aに計算式が記載されていますので引用します。
1 売上税額
⑴ 原則(割戻し計算)
(略)
① 軽減税率の対象となる売上税額
軽減税率の対象となる
課税売上げ(税込み)× 100/108 = 軽減税率の対象となる
課税標準額
軽減税率の対象となる
課税標準額× 6.24% = 軽減税率の対象となる
売上税額② 標準税率の対象となる売上税額
軽減税率の対象となる
課税売上げ(税込み)× 100/110 = 軽減税率の対象となる
課税標準額
標準税率の対象となる
課税標準額× 7.8% = 標準税率の対象となる
売上税額③ 売上税額の合計額
軽減税率の対象となる
売上税額+ 標準税率の対象となる
売上税額= 売上税額の合計額 ⑵ 特例(積上げ計算)
(略)
適格請求書等に記載した
消費税額等の合計額× 78/100 = 売上税額の合計額
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問76(適格請求書等保存方式の下での税額計算の概要))
まずは用語の整理をしましょう。
「①軽減税率~」は要するに消費税が8%のもののことですね。
ということは、「② 標準税率~」は10%の方ですね。
「課税標準額」とは、税計算の基礎となる額です。
これに8%や10%などの税率をかけると「税額」が出ます。
この「税額」を最終的に税務署に納めることになります。
「売上税額」というのは、売上にかかる税額ですね。
お客さんからもらった(預かった)消費税額です。
例えば、110円の商品を売ったときに、お客さんから110円のお金をもらいますよね。
そのうち100円は自分の物になりますが、消費税10円は最終的には税務署に行きます。
なので、消費税は「もらう」というより「預かる」と表現した方が正確と思います。
「売上税額」があればその逆の「仕入税額」もあります。
仕入にかかる税額ですね。
仕事でモノを買ったりサービスにお金を支払ったりすると思いますが、それに付随して支払った税額です。
「売上税額」は預かった消費税、「仕入税額」は払った消費税、と覚えましょう。
次に、式だけではわかりづらいので具体例に落とし込んでいきましょう。
割戻し計算
設例1
- あなたが八百八という八百屋を経営していたとします。
- 野菜の売上が税込で108万円の売上があったとします。(軽減税率の対象。つまり①のパターンです。)
- この108万円が①の上段の式の「軽減税率の対象となる課税売上げ(税込み) 」に該当します。
- なので、
108万円×100/108=100万円
となるので、課税標準額は100万円になります。 - 続いて①の下段の式に当てはめると、
100万円×6.24%=6万2,400円
となって、「軽減税率の対象となる売上税額」が6万2,400円とわかります。
いかがでしょうか?
この場合だと売上税額が6万2,400円になりますね。
と、ここで疑問に思った方もおられると思います。
「消費税8%なのに、何で売上税額が8万円じゃないの?何で最後8%じゃなく6.24%をかけてるの?」
ごもっともですねw
これには訳があります。
消費税には国税部分と地方税部分とがあると聞いたことありませんか?
消費税8%と言いますが、8%のうち6.24%が国税部分です。
なぜわざわざ国税部分を取り出して計算しているかというと、消費税の計算をするときの手順としては、
ちなみに
6.24%×22/78=1.76%
6.24%+1.76%=8%
10%の場合でも
7.8%×22/78=2.2%
7.8%+2.2%=10%
となります。
こんな感じで売上税額を算出します。
②10%の場合も同様なので例を出して計算するのは割愛します。
①、②のように税率別で計算して、③で最後に足し合わせて合計額を出します。
これが割戻し計算です。
積上げ計算
先ほど引用したときに(略)としたところを引用します。
(2) 特例(積上げ計算)
相手方に交付した適格請求書又は適格簡易請求書(以下これらを併せて「適格請求書等」といいます。)の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している 場合を含みます。)には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛け て算出した金額を売上税額とすることができます(新消法455、新消令621)。
なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。
わかりやすいようにカッコなどを省きますね。
「相手方に交付した適格請求書の写しを保存している場合には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛け て算出した金額を売上税額とすることができます。」
何を言っているか要約すると
- 適格請求書を保存していることが条件です。
- 相手方に交付した適格請求書に書いてある消費税額の合計に100分の78をかけた金額=売上税額としていいです。
この2点です。
1.の方は良しとして、2.の方がいまいち要約できてませんね。
先ほどの設例1を例にとって説明しましょう。
設例1では、野菜の売上が税込で108万円でした。
もちろん適格請求書か適格簡易請求書を交付しています。
適格請求書の合計額欄には、例えばこんなふうに記載されていると思います。
「(8%対象 40,000 円 消費税 3,200 円)」
適格請求書は、税率ごとの消費税額を記載するのは必須でしたね。
2.をさらに2段階に分割してみましょう。
- あなたが保存しているすべての適格請求書に記載されている消費税額を合計してください。
- その合計額に100分の78をかけた金額=売上税額です。
設例1のとおり税込108万円の売上があったら、適格請求書の消費税の合計額は8万円に近い数字になると思います。
8万円としたら、
8万円×78/100=6万2,400円
ということで、割戻し計算と同じ数字が算出されました。
ここでひとつ注意点があります。
割戻し計算と積上げ計算とでは、必ずしも同じ売上税額にはなるとは限りません。
というのも端数処理があるためです。
リーフレットの「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)」の「(1) 適格請求書の記載事項 」 にも
(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
と記載されています。
端数処理の方法については、
適格請求書の記載事項である消費税額等については、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行います(新消令70の10、インボイス通達3-12)。
なお、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができます。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問37(適格請求書に記載する消費税額等の端数処理))
このように、「切上げ、切捨て、四捨五入、どれでもいいよ」とされています。
一般的には1円未満切り捨てが多いように思います。
次のような例を考えてみましょう。
設例2
- 1パック税込360円(本体価格334円、消費税26円)のイチゴを、30人のお客さんがそれぞれ1パックずつ買っていきました。
- 売上(税込み)は
360円×30=10,800円
となります。 - 30人のお客さんにそれぞれ適格請求書を交付しているので、
「8%対象 360 円(税込) 消費税 26 円」
と記載された適格請求書が30枚保存されています。 - この場合、売上税額を割戻し計算と積上げ計算で算出した場合、どうなるでしょうか?
- 割戻し計算の場合
10,800円×100/108=10,000円
10,000円×6.24%=624円(売上税額)
- 積上げ計算の場合
26円×30枚=780円
780円×78/100=608.4円(売上税額)
というわけで、売上税額が
割戻し計算の場合→624円
積上げ計算の場合→608.4円
と、同じ金額になりません。
そりゃそうです。
適格請求書1枚につき端数を切り捨てしてますから、数字が変わってくるのは当然と言えば当然なんですね。
設例2はごく少額なので「たった6円の差」に見えますが、大手スーパーになると看過できない大金になってきます。
なので、スーパーなどでは、割戻し計算か積上げ計算かどちらを選ぶかというと、積上げ計算の方が有利でしょうね。
他の業種だと、
「割戻し計算しても、積上げ計算しても税額に大差ない」
「いちいち請求書の消費税額なんて拾ってられない。その人件費の方が高い」
といった理由で、原則どおり割戻し計算を選択するところもあるでしょう。
有利な方を選びたいですね。
なお、売上税額の計算に「積上げ計算」を選択した場合は、仕入税額の計算時にも「積上げ計算」を選択しないといけません。
売上税額の計算に「割戻し計算」を選択した場合は、仕入税額の計算時には、「割戻し計算」「積上げ計算」どちらでも選択することができます。
なぜこんな決まりになっているのでしょうか?設例2で見たように、割戻し計算と積上げ計算とでは、積上げ計算の方が税額が低くなります。
- 割戻し計算→税額高い
- 積上げ計算→税額低い
これは売上税額でも仕入税額でも同じです。
税務署に納める税額は下記の式のとおりです。
税務署に納める税額=売上税額-仕入税額
なので、
売上税額を積上げ計算、仕入税額を割戻し計算にすると、
税務署に納める税額=低い売上税額-高い仕入税額
となるので、圧倒的に有利になっちゃいますよね。
みんなこれを選んでしまいます。
おそらくこれを抑制するために、売上税額の計算に積上げ計算を選択する場合に規制をかけているんですね。
消費税額等の記載がない適格簡易請求書の交付を受けたとき
先ほどの設例2の積上げ計算の場合は、適格請求書で消費税額が明記されているケースでした。
ですが、適格簡易請求書の場合、消費税額が明記されているとは限りません。
リーフレットの「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)」の「(1) 適格請求書の記載事項 」 の(注)に、適格簡易請求書の記載について、次のように書いてあるんですね。
「適用税率」 「消費税額等」はいずれか一方の記載で足ります。
なので、適用税率だけ記載されていて、消費税額が記載されてないパターンの適格簡易請求書が存在するというわけです。
「適用税率だけ記載されていて、消費税額が記載されてないパターン」ってどういうものか?と言うと、設例2では、適格請求書に
「8%対象 360 円(税込) 消費税 26 円」
と記載されていたとしました。
この記載が
「8%対象 360 円(税込)」
となるということです。
適用税率である「8%」は残して、「消費税 26 円」が消えてしまいました。
では、消費税額の記載がない場合、どうやって積上げ計算すればいいでしょうか?
Q&Aから引用します。
適格簡易請求書に記載された金額が、税込金額の場合は、その金額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を掛けて消費税額等を算出し、また、税抜金額の場合は、その金額に100分の10(軽減税率の対象となる場合は100分の8)を掛けて消費税額等を算出し、その金額を基礎として、仕入税額の積上げ計算を行います。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問80(適格請求書などの請求書等に記載された消費税額による仕入税額の積上げ計算))
要するに、自分で計算して消費税額を算出せよと書いてあります。
例えば、適格簡易請求書に「8%対象 360 円(税込)」と記載されていた場合、
360円×8/108=26.6666→26円
といったような具合ですね。
6 免税事業者の登録手続
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年 10 月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられています。
「消費税課税事業者選択届出書」って何でしょう?
そもそも免税事業者とは、課税売上高が1,000万円以下のため、納税の義務が免除された事業者のことでした。
ですが、課税売上高が1,000万円以下でも、課税事業者となることを選択できるんです。
「えー!何のために?」
と思われるでしょうが、例えば輸出業者は、外国に商品を売って売上を上げます。
消費税は日本国内の取引にかかる税なので、この場合売上に消費税がかかりません。
一方、輸出業者の仕入れが国内の取引であれば、消費税はかかります。
つまり、こういった輸出業は、「売上税額は0がだけど、仕入税額はかかっている」という状態になります。
売上税額<仕入れ税額の場合、消費税が還付されます。
もちろん免税事業者では還付になりませんので、課税事業者にならないといけません。
こうした理由から、課税売上高が1,000万円以下で課税事業者を選択する事業者がおられるのです。
どうやったら課税事業者になれるのかと言うと「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出します。
(参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁)
インボイス制度が始まると、免税事業者は取引上不利になることが予想されますので、適格請求書発行事業者になりたいと考えている免税事業者もおられるんじゃないかと思います。
その場合、原則的には下のとおり2ステップの手続きが必要です。
- 「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出する。
- 「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する。
ただし、経過措置として令和5年 10 月1日を含む課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、「1.は不要ですよ、2.のみでいいですよ」ということがリーフレットに書かれています。
適格請求書発行事業者の登録を促したいんでしょうね。
それでは以上になります。
長々となりましたが、お付き合いくださいましてありがとうございました。