「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その1
前回までのおさらい
インボイスとは何ぞや?ということで、前回まで
と、上記国税庁HPに記載されている
令和3年10月1日から登録申請書受付開始!(リーフレット)(令和2年10月)(PDF/657KB)
を読んできました。
その結果、下記のことがわかりました。
- インボイス=適格請求書
- 適格請求書とは、「現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータ」のこと。
- 「適格請求書」っていうくらいだから請求書の一種だろうなと思っていたが、そうとも限らなさそう。
- インボイス(適格請求書)を発行するには登録申請が必要。
- 申請受付は令和3年10月1日から。
- インボイス制度が開始されるのは令和5年10月1日から。
- 開始日からインボイスを発行するには令和5年3月31日までに申請する必要がある。
- 「現行の区分記載請求書」やインボイスの具体例はリーフレット裏面に載っていた。
- インボイスは仕入税額控除のため。
今回はもう少しインボイスに踏み込むため、
の中の2番目のリーフレット
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)(PDF/459KB)
について詳しく見ていきたいと思います。
まずは、リード文
インボイス制度は仕入税額控除の方式?
リーフレットの冒頭(リード文)から第1文目を引用します。
令和5年 10 月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。
内容は、前回までに見たとおり、「令和5年10月1日からインボイス制度が始まりますよ」というものです。
「複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として」というのが、少し気になりますね。
これまで、消費税が3%や5%、8%の時代は税率は単一でした
ですが、10%になってからは「軽減税率」と言って食料品や新聞にかかる税率のみ8%になって、2つの税率が入り混じるような状況になりました。
このことを「複数税率」と言います。
「仕入税額控除」は、詳しくお話をしたいところですが長くなりそうなので割愛しますが、消費税を税務署に納めるときに「仕入税額」ってのを「控除」してくれることなんですね。
「控除」=「差っ引く(さっぴく)」って置き換えてください。
要するに、「仕入税額控除」とは、「納税額からいくらか差っ引くよ」ってくらいに抑えていただければいいと思います。
複数税率時代の消費税の差っ引き方がインボイス制度になるということですね。
インボイス制度が仕入税額控除の要件になる
第2文目に行きましょう。
適格請求書等保存方式の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)等の保存が仕入税額控除の要件となります。
太字やアンダーラインが施されていて大事そうですね!
ですが、少し読みにくいですね。
なぜかというと
「適格請求書」(いわゆるインボイス)等
にかかっていく言葉(形容詞)が多いからです。
- 「税務署長に申請して登録を受けた」は「課税事業者」にかかります。
- 「税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である」は「適格請求書発行事業者」にかかります。
- 「税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である適格請求書発行事業者が交付する」は、「「適格請求書」(いわゆるインボイス)等」
という三段構えなんですね。
細かく分解して読んでいきましょう。
適格請求書等保存方式の下では、
=「インボイス制度の下では」ですね。
税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」
と書いてあるのは「適格請求書発行事業者」だけ読めばいいですね。
「適格請求書発行事業者」は、読んで字のごとく、「適格請求書」(=インボイス)を発行する事業者(=会社)のことですね。
税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である
という部分の要点は、次の2点です。
- インボイスを発行するには税務署への登録が必要。
- 課税事業者であること。
課税事業者については、追々詳しく触れますが、重要なワードになります。
結局、ここが骨子です。
仕入税額控除って何?
会社としては仕入税額控除を受けたいわけなんですよ。
なぜなら、仕入税額控除が受けられないと無駄に消費税を納税しないといけなくなるからです。
少し具体例を出して説明しますね。
例えば、ここに剛田商店という文房具を売るお店があったとします。
大量の文房具を770万円(税込)で仕入れたとします。本体価格700万円、消費税70万円です。
これをたくさんのお客さんに売って、1,100万円(税込)の売上があったとします。本体価格1,000万円、消費税100万円です。
納税額を簡単な式で表すと
納税額=売上にかかる消費税ー仕入にかかる消費税
になります。
売上にかかる消費税額とは、上の例でいうと1,100万円のうちの消費税100万円になります。
この100万円はお客さんから預かっていると考えてください。
お客さんから消費税を預かって、後日税務署に納めるのです。
この場合、100万-70万=30万円を消費税として税務署に納めます。
100万円から70万円を差っ引くわけですね。
この70万円が「仕入税額」で、70万円を差っ引くことを「仕入税額控除」と言うのです。
もし仕入税額控除ができなければ、100万円まるまる税務署に納めないといけません。
仕入税額控除を受けないと70万円丸損になってしまいます。
仕入税額控除を受けたいのも納得ですね。
で、本文に戻りますと、インボイスの保存が仕入税額控除の要件と書いてあります。
大変です、インボイス制度に乗っからないと仕入税額控除を受けられません。
えらいこっちゃというわけです。
いまの制度は?
次に大きなカッコで括られたフォント小さめの文章があります。
令和元年 10 月1日から令和5年9月 30 日までの間の仕入税額控除の方式は、区分記載請求書等保存方式です。 区分記載請求書等保存方式の内容については、パンフレット「よくわかる消費税軽減税率制度(令和元年7月)」を ご参照ください。
これは何かと言いますと、今はどうしてるの?という話です。
先ほど見たようにリード文第1文で、「令和5年 10 月1日から、消費税が8%や10%入り混じる状況に対応するためインボイスを導入する」と書かれていましたね。
ここで「おやおや」と気づいた方もおられるかもしれません。
「複数税率が交じるのって、軽減税率が始まったのって令和元年 10 月1日からだよね?インボイスは令和5年 10 月1日からだから、この間、4年間はどうしてるの?」
この疑問に対するアンサーがこのカッコの中です。
この4年間は、インボイス制度でなく「区分記載請求書等保存方式」でやってますよ、と。
インボイス(適格請求書)でなく「区分記載請求書」ですよ、と。
「区分記載請求書等保存方式」については、別途パンフレットが出てますし、ここで詳細を述べると煩雑になるので割愛します。
というわけで、本日はここまでにしたいと思います。
続きはまた次回です。