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【解説】源泉徴収票の計算をしてみよう【国税太郎さんの源泉徴収票】

サラリーマンの方であれば、11月くらいに年末調整の書類を会社へ提出しているのではないでしょうか?

で、12月になれば下のような源泉徴収票をもらいます。

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(出典:令和2年分 給与所得の源泉徴収票の記載の仕方 - 国税庁

源泉徴収票は何やら重要な書類らしいということはわかっていても、ここに書いてある数字が何を意味するものか知っている人は少ないのではないでしょうか?

そこで、上の国税庁から引用した画像の国税太郎さんの源泉徴収票を例にとり、実際に計算してみたいと思います。

1.支払金額

まず支払金額です。

6,847,500という数字が記載されています。

こちらは、会社から国税太郎さんへ支払われた給与や手当の合計額です。

問題ないですね。

2.給与所得控除後の金額(調整控除後)

次に給与所得控除後の金額です。

ここに記載されているのが、5,062,750という数字ですが、ここでもう迷子です。

周りにある数字を足したり引いたりしても一致しません。

いったい何の金額かよくわかりません。

何の説明もありません。

一言で言うなら不親切ですね。

「給与所得控除後の金額」と書いてあります。

「給与所得控除」って何でしょう?

その答えがこちらです。

1 給与所得控除とは

 給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出しますが、この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。
 ただし、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、以下の表にかかわらず、所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)(e-Govへリンク)により給与所得の金額を求めます。

令和2年分以降

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

(出典:No.1410 給与所得控除|国税庁

つまり「給与所得控除後の金額」は、「支払金額」から「給与所得控除額」を差し引いてやれば算出されます。

実際に計算してみましょう。

国税太郎さんの支払金額は6,847,500円でした。

上の表の「給与等の収入金額」欄では、「6,600,001円から8,500,000円まで」に該当しますので、「給与所得控除額」は「収入金額×10%+1,100,000円」という計算式に当てはめて計算します。

これを計算すると、

6,847,500円×10%+1,100,000円=1,784,750円(←「給与所得控除額」)

「支払金額」から「給与所得控除額」を差し引くと、

6,847,500円-1,784,750円=5,062,750円

これで「給与所得控除後の金額」が算出されました。

3.所得控除の額の合計額

所得控除とは?

こちらは、4,669,846と記載されています。

先ほどは「給与所得控除」でしたが、こちらは「所得控除」です。

よく似た言葉ですが、どう違うのでしょう?

先の「給与所得控除」は、収入金額に応じて控除額が決まりました。

では、「所得控除」はどんな控除でしょう?

実は「所得控除の額の合計額」は数種類の「所得控除」を合計した額なんです。

どんな種類の控除があるかと言うと、

所得控除の種類は次のとおりです。
 雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除

(出典:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

この15種類です。

たくさんありますが、全部覚える必要はありません。

主要なものやなじみのあるものだけ抑えればいいです。

以下、主な控除を見ていきましょう。

基礎控除

令和元年以前は基礎控除として、誰でも38万円の控除がありました。

令和2年以降は所得に応じて控除額が変わります。

所得が2,400万円以下の人の基礎控除額は48万円です。

大体の人は48万円の控除になると思います。

(参考:No.1199 基礎控除|国税庁

配偶者控除

所得が48万円以下(給与収入108万円以下)の配偶者がいる場合に受けられる控除です。

給与収入のほかに条件が3つほどありますが、気になる方は下記の参考リンク先でご確認ください。

控除額は基礎控除と同様に所得額に応じて変わります。

所得が900万円以下の人の控除額は38万円です。

この他は以下のリンク先をご参考ください。

(参考:No.1191 配偶者控除|国税庁

配偶者特別控除

気になるのは、配偶者特別控除配偶者控除の違いですね。

何が特別なのか?

何も特別なことはありません。

配偶者控除の条件の一つとして、配偶者の給与収入が108万円以下というのがありましたが、では給与収入が109万円なら控除が0になるのかというと、いきなり0にはならないのです。

正確にいうと、配偶者控除は0になって配偶者特別控除でいくらか控除されるという仕組みになっています。

条件や控除額は以下のリンクでお確かめください。

(参照:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

扶養控除

扶養というのは、要するに「養っている」ということですね。

子どもや収入がなくなった親などをイメージしていただくといいでしょう。

なお、扶養控除の対象となる親族の年齢は、16~23歳と70歳以上です。

なので中学生以下のお子さんには適用されません。

年齢や同居か否かなどで控除額が変わります。

(参照:No.1180 扶養控除|国税庁

社会保険料控除

サラリーマンの方であれば、健康保険、国民年金、厚生年金保険などの社会保険料が毎月の給料から天引きされているのものと思います。

この社会保険料の全額が控除されます。

(参照:No.1130 社会保険料控除|国税庁

生命保険料控除

サラリーマンの方であれば、年末調整の時に保険会社から送られてきたハガキを見ながら会社に提出する書類を作ったことがあるかと思います。

生命保険等に支払った額に応じていくらか控除されます。

契約の時期によって異なりますが、平成24年1月1日以後に契約して年間8万円以上の支払いがあれば、4万円の控除になります。

(参照:No.1140 生命保険料控除|国税庁

地震保険料控除

家屋などの財産にかかる地震保険料の支払いがある場合に受けられる控除です。

こちらも会社の年末調整でなじみの方も少なくないと思います。

上限が5万円で、支払金額の全額が控除されます。

また、旧長期損害保険料も地震保険料控除の対象となりますが、ややこしいのでここでは割愛します。

(参照:No.1145 地震保険料控除|国税庁

国税太郎さんの場合

では、国税太郎さんの源泉徴収票に戻りましょう。

国税太郎さんの「所得控除の額の合計額」は、4,669,846円でした。

この内訳の種明かしをしていきます。

まず源泉徴収票に表記されているものから考えます。

配偶者(特別)控除の額

「配偶者(特別)控除の額」の欄に380,000と記載されています。

給与収入が108万円以下の配偶者がおられるのでしょう。

社会保険料等の金額

社会保険料等の金額」欄に909,846円と記載されています。

こちらは全額社会保険料控除となります。

生命保険料の控除

「生命保険料の控除」が120,000です。

こちらは生命保険料控除の最高額ですね。

引用します。

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(出典:No.1140 生命保険料控除|国税庁

国税太郎さんの源泉徴収票の「生命保険料の金額の内訳」欄にそれぞれの支払額が載っています。

適用欄の下ですね。

  1. 新生命保険料の金額 180,000
  2. 旧生命保険料の金額 100,000
  3. 介護医療保険料の金額 90,000
  4. 個人年金保険料の金額 360,000
  5. 個人年金保険料の金額 180,000

1,3,4は新契約のもので、支払額が8万円以上のとき、控除額が4万円になります。

2,5は旧契約のもので、支払額が10万円以上のとき、控除額が5万円になります。

国税太郎さんの場合、いずれも上限に達してますので、

4万円×3+5万円×2=22万円

となり、生命保険料控除の最高額である12万円が控除されることになります。

地震保険料の控除

こちらも最高額の50,000円が記載されています。

源泉徴収票に金額が明記されていない控除

で、ここまでは源泉徴収票に金額が明記されています。

この他の所得控除は、金額が源泉徴収票に記載されていません。

それは何かというと、

この2つです。

基礎控除

国税太郎さんは所得が2,400万円以下なので、基礎控除額は48万円になります。

扶養控除

「配偶者(特別)控除の額」の欄の左側に「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」欄があり、こちらに対象となる人数が記載されています。

金額をズバリ書くのではなく、人数さえわかれば金額も計算できるでしょってなものでしょうか。

控除額は、下の表のとおりです。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(※1) 38万円
特定扶養親族(※2) 63万円
老人扶養親族(※3) 同居老親等以外の者
48万円

 

同居老親等(※4) 58万円

(出典:No.1180 扶養控除|国税庁

国税太郎さんの源泉徴収票を見てみると

特定扶養親族 1人×63万円=63万円

老人扶養親族(同居老親等) 1人×58万円=58万円

一般の控除対象扶養親族 4人×38万円=152万円

と、このようになります。

(なお、老人欄に「内」と書かれた欄に「1」、「人」と書かれた欄にも「1」と記載されていますが、「人」欄には同居も同居以外も含めたトータルの人数が記載され、「内」欄には、そのうち同居老親等の人数が記載されたものです。)

所得控除の額の合計額

国税太郎さんの所得控除の額を表にまとめると下のようになります。

基礎控除 480,000
配偶者控除の額 380,000
特定扶養親族の控除の額 630,000
老人扶養親族の控除の額(同居老親等) 580,000
一般の控除対象扶養親族の控除の額 1,520,000
社会保険料等の控除 909,846
生命保険料の控除 120,000
地震保険料の控除 50,000
<合計> 4,669,846

合計額が源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」に合致しましたね。

4.源泉徴収税額

「所得控除の額の合計額」の右の欄が「源泉徴収税額」ですが、0円になってます。

なぜでしょう?

順番に見ていきましょう。

所得税額の計算

所得税額の計算式は、下のようになります。

所得税額=課税される所得金額(課税所得)×所得税

課税所得の求める計算式は、

課税所得=支払金額-給与所得控除の額-所得控除の額

具体的な数字を入れて国税太郎さんの課税所得を求めます。

6,847,500-1,784,750-4,669,864=392,886→392,000(千円未満切捨)

所得税率は下の速算表から5%とわかります。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

(出典:No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

したがって、所得税額は、

所得税額=課税所得×所得税

    =392,000×5%

    =19,600

ここから住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の額が差し引かれます。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は税額控除

住宅ローン控除は税額控除です。

これまで見てきた生命保険料控除などは所得控除でした。

所得控除は収入があってそこから所得控除の額を差し引いて課税所得を算出していました。

税額控除は、課税所得から算出した税額から直接差し引きます。

国税太郎さんの住宅ローン控除がいくらかと言うと、源泉徴収票に表示されています。

ちょうど「国税花子」の欄の真上の「住宅借入金等特別控除可能額」欄の「205,000」、これが国税太郎さんの住宅ローン控除の額です。

先ほど算出した所得税額は19,600円でした。

住宅ローン控除の額(205,000円)の方が所得税額より大きいので、源泉徴収税額は0円になります。

そして、所得税から控除した額(19,600円)は「地震保険料の控除額」の右の「住宅借入金等特別控除の額」に印字されています。

控除しきれなかった住宅ローン控除の額が185,400円ありますが、これはどうなるかと言うと、住民税から控除されます。

なお、「住宅借入金等特別控除可能額」欄は、年末調整で控除しきれなかった場合にのみ印字されます。

なので、住宅ローン控除あるのに印字されてないという人も多いと思います。

 

以上、国税太郎さんの源泉徴収票の解説を行いました。

最後までご覧くださり、ありがとうございました。