【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その4
インボイス制度とやらの導入が間近に迫っているとは聞いたもののよくわからない。。。
「インボイス」で検索したら国税庁のHPに行き当たったが、読んでも理解できない。。。
国税庁も周知のために親切にリーフレットをPDFで配布してるけど、リーフレットも難しい。。。
そんな方のためにリーフレットの解説をしています。
どんなリーフレットを解説しているかというとこちらです。
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)(PDF/459KB)
前回は2頁目の「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点) 」の途中まで見てきました。
今回はその続きから参りましょう。
「現行の区分記載請求書」って何?
前回までに適格請求書発行事業者には、以下の2つの義務があることを確認しました。
- (取引の相手方の求めに応じて)適格請求書を交付する義務
- 交付した適格請求書の写しを保存する義務
「適格請求書」ってどんなものなの?と言うと、具体例といっしょに説明してくれているのが「(1) 適格請求書の記載事項 」です。
(1) 適格請求書の記載事項
適格請求書発行事業者は、以下の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類を交付しなければなりません(下線の項目が、現行の区分記載請求書の記載事項に追加される事項です。)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤ 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
太字アンダーラインの箇所が現行の区分記載請求書の記載事項に追加される事項ですね。
現行に「登録番号」、「適用税率」、「消費税額等」の3事項を追加するだけなんですね。
「なるほどなるほど。」と飲み込める人って何人いるんでしょうか?
私たちは「現行の区分記載請求書」って何?ってところからなのです。
説明しましょう。
【区分記載請求書等保存方式】と【請求書等保存方式】
リーフレットの冒頭を引用します。
令和5年 10 月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。
インボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として導入されると書いてあります。
ここで2つのことを抑えてください。
まず、1.仕入税額控除です。
令和5年 10 月1日以降は、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件になります。
仕入税額控除ができないと消費税の納税額が爆上がりするかもしれませんので、重要です。
次に2.複数税率です。
消費税率が10%になる以前、税率は単一でしたが、軽減税率が始まってから税率は8%と10%が入り混じるようになりました。
これを複数税率と言います。
でもちょっと待ってください。
令和5年 10 月1日から、インボイス制度が導入になりますが、複数税率になったのは、令和元年10月からです。
令和5年 10 月1日までの仕入税額控除の要件はどうなってるの?
その答えが区分記載請求書等保存方式です。
このことが詳しく記載されているのが、国税庁のパンフレット「よくわかる消費税軽減税率制度(令和元年7月)」です。
パンフレットの5頁目、表題が「帳簿及び請求書等の記載と保存(令和元年 10 月1日〜令和 5 年 9月30 日)」の頁の中央の表をご覧ください。
まず「期間」の欄を見てみましょう。
令和元年9月 30 日まで
【請求書等保存方式】-------------------------------------
令和元年 10 月1日から
令和 5 年9月 30 日まで
【区分記載請求書等保存方式】
【区分記載請求書等保存方式】の前は、【請求書等保存方式】だったんですね。
「へ~」と聞き流していただければ結構です。
次に「請求書等への記載事項」を見てみましょう。
【請求書等保存方式】では、
① 請求書発行者の氏名又は名称
② 取引年月日
③ 取引の内容
④ 対価の額
⑤ 請求書受領者の氏名又は名称※
この5つの事項を記載することになっています。
一般的な請求書に書かれている内容ですね。
これくらいの記載がないと何の請求書かわからないくらい基本的な事項ですよね。
【区分記載請求書等保存方式】では、さらに下記の事項を追加してくださいねと言ってます。
(上記に加え)(注2)
⑥ 軽減税率の対象品目である旨
⑦ 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
このように、軽減税率の導入に適合するように事項を増やしたことがわかります。
「(注2)」が気になるのでこちらも引用しましょう。
(注 2)仕入先から交付された請求書等に、「⑥軽減税率の対象品目である旨」や「⑦税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がない時は、これらの項目に限って、交付を受けた事業者自らが、その取引の事実に基づき追記することができます。
なんと!請求書をもらった側が請求書に追記していいと記載されていますね!!
パンフレットでもイラストで描かれた男の人も
交付された請求書等に⑥、⑦の記載がないときは・・・
「⑥軽減税率の対象品目である旨」と「⑦税率ごとに区分して合計した税込対価の額」は追記できるんだね。
って驚いてますね!
常識的に、相手からもらった請求書に追記するのはご法度ですよね。
請求金額なんかをこっちで勝手に追記したら、もう無茶苦茶になってしまいます。
なお、インボイス制度になったら、追記はできません。
記載事項に誤りがある適格請求書の交付を受けた事業者は、仕入税額控除を行うため
に、売手である適格請求書発行事業者に対して修正した適格請求書の交付を求め、その交付を受ける必要があります(自ら追記や修正を行うことはできません。)。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問15(適格請求書の記載事項に誤りがあった場合))
それが普通ですよね。
というのが現行の区分記載請求書でした。
適格請求書に追加する3つの事項
適格請求書はこの区分記載請求書に3つの事項を追加するんでしたね。
どんな事項かと言うと
- 登録番号
- 適用税率
- 消費税額等
でしたね。
1.登録番号
こちらは税務署に適格請求書発行事業者として登録すると交付される番号でしたね。
この番号を発行者とともに記載します。
2.適用税率
通常なら10%、軽減税率なら8%というように適用された税率を明記します。
3.消費税額等
これはもういいですねw
ただ、カッコ書きの部分が気になりますね。
⑤ 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
端数処理について定義されてます。
消費税の端数処理は結構各自でお任せみたいなところがありました。
ですが、ここに来てガッチリ規定されたようです。
インボイス制度以前では、商品ひとつひとつについて端数処理してOKでした。
例えば、110円(税抜)のトマト一個と220円(税抜)のピーマン一個を買ったとします。
インボイス制度以前なら、このとき、
- トマトの消費税=110×8%=8.8円→8円(切捨)
- ピーマンの消費税=220×8%=17.6円→17円(切捨)
- 合計 8円+17円=25円
という端数処理をしてよかったのです。
ですが、インボイス制度以後は下記のような端数処理になります。
- (トマト+ピーマン)×8%=(110+220)×8%=26.4円→26円(切捨)
上記のようなケースでは、消費税が1円変わってしまうという結果になります。
何にせよ、端数処理の仕方が統一されるというのは重要な変更点ですので、頭の隅に置いておくといいと思います。
今回はここまでにします。
ではまた次回。