知ラナイモノが多すぎる

検索したりしてわかったことなどを書きつけます。

【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その8

インボイス制度とやらの導入が間近に迫っているとは聞いたもののよくわからない。。。

インボイス」で検索したら国税庁のHPに行き当たったが、読んでも理解できない。。。

国税庁も周知のために親切にリーフレットをPDFで配布してるけど、リーフレットも難しい。。。

 

そんな方のためにリーフレットの解説をしています。

どんなリーフレットを解説しているかというとこちらです。

消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)

 そんな解説もこれで8回目になります。

長丁場になっていますが、このリーフレットの解説もようやく最終回です。

(過去記事)

  1. 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その1 - 知ラナイモノが多すぎる
  2. 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その2 - 知ラナイモノが多すぎる
  3. 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その3 - 知ラナイモノが多すぎる
  4. 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その4 - 知ラナイモノが多すぎる
  5. 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その5 - 知ラナイモノが多すぎる
  6. 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その6 - 知ラナイモノが多すぎる
  7. 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その7 - 知ラナイモノが多すぎる

 前回に引き続いて、リーフレット4の頁目「5 税額計算の方法 」の解説から始めたいと思います。

よろしくお願いします。

5 税額計算の方法

令和5年 10 月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算は、次の①又は②を選択することができます。
① 適格請求書に記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」
② 適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」
ただし、売上税額を「積上げ計算」により計算する場合には、仕入税額も「積上げ計算」により計算しなければなりません。なお、売上税額について「積上げ計算」を選択できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。

まず、

  • 積上げ計算
  • 割戻し計算

というワードが出てきました。

ニューワードですね。

標題から消費税の計算方法だろうな、というのは予想がつきます。

どういう計算方法なんでしょうか?

積上げ計算と割戻し計算

Q&Aに計算式が記載されていますので引用します。

1 売上税額

⑴ 原則(割戻し計算)

(略)

① 軽減税率の対象となる売上税額

軽減税率の対象となる
課税売上げ(税込み) 
 × 100/108  軽減税率の対象となる
課税標準額
軽減税率の対象となる
課税標準額
 × 6.24%  軽減税率の対象となる
売上税額

 ② 標準税率の対象となる売上税額

軽減税率の対象となる
課税売上げ(税込み) 
 × 100/110  軽減税率の対象となる
課税標準額
標準税率の対象となる
課税標準額
 × 7.8%  標準税率の対象となる
売上税額

 ③ 売上税額の合計額

軽減税率の対象となる
売上税額
 + 標準税率の対象となる
売上税額
売上税額の合計額

 ⑵ 特例(積上げ計算)

(略)

適格請求書等に記載した
消費税額等の合計額
 × 78/100  売上税額の合計額

(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問76(適格請求書等保存方式の下での税額計算の概要)

まずは用語の整理をしましょう。

①軽減税率~」は要するに消費税が8%のもののことですね。

ということは、「② 標準税率~」は10%の方ですね。

課税標準額」とは、税計算の基礎となる額です。

これに8%や10%などの税率をかけると「税額」が出ます。

この「税額」を最終的に税務署に納めることになります。

売上税額」というのは、売上にかかる税額ですね。

お客さんからもらった(預かった)消費税額です。

例えば、110円の商品を売ったときに、お客さんから110円のお金をもらいますよね。

そのうち100円は自分の物になりますが、消費税10円は最終的には税務署に行きます。

なので、消費税は「もらう」というより「預かる」と表現した方が正確と思います。

売上税額」があればその逆の「仕入税額」もあります。

仕入にかかる税額ですね。

仕事でモノを買ったりサービスにお金を支払ったりすると思いますが、それに付随して支払った税額です。

売上税額」は預かった消費税、「仕入税額」は払った消費税、と覚えましょう。

次に、式だけではわかりづらいので具体例に落とし込んでいきましょう。

割戻し計算
設例1
  1. あなたが八百八という八百屋を経営していたとします。
  2. 野菜の売上が税込で108万円の売上があったとします。(軽減税率の対象。つまり①のパターンです。)
  3. この108万円が①の上段の式の「軽減税率の対象となる課税売上げ(税込み) 」に該当します。
  4. なので、
    108万円×100/108=100万円
    となるので、課税標準額は100万円になります。
  5. 続いて①の下段の式に当てはめると、
    100万円×6.24%=6万2,400円
    となって、「軽減税率の対象となる売上税額」が6万2,400円とわかります。

いかがでしょうか?

この場合だと売上税額が6万2,400円になりますね。

と、ここで疑問に思った方もおられると思います。

消費税8%なのに、何で売上税額が8万円じゃないの?何で最後8%じゃなく6.24%をかけてるの?」

ごもっともですねw

これには訳があります。

消費税には国税部分地方税部分とがあると聞いたことありませんか?

消費税8%と言いますが、8%のうち6.24%が国税部分です。

なぜわざわざ国税部分を取り出して計算しているかというと、消費税の計算をするときの手順としては、

  1. 国税分の税額を算出する
  2. 国税分の税額に22/78をかけて地方税分を算出する

という形で、国税分を基礎にして地方税分を計算するんです。

ちなみに

 6.24%×22/78=1.76%

 6.24%+1.76%=8%

10%の場合でも

 7.8%×22/78=2.2%

 7.8%+2.2%=10%

となります。

こんな感じで売上税額を算出します。

②10%の場合も同様なので例を出して計算するのは割愛します。

①、②のように税率別で計算して、③で最後に足し合わせて合計額を出します。

これが割戻し計算です。

積上げ計算

先ほど引用したときに(略)としたところを引用します。

(2) 特例(積上げ計算)

相手方に交付した適格請求書又は適格簡易請求書(以下これらを併せて「適格請求書等」といいます。)の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している 場合を含みます。)には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛け て算出した金額を売上税額とすることができます(新消法455、新消令621)。
なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。

 わかりやすいようにカッコなどを省きますね。

「相手方に交付した適格請求書の写しを保存している場合には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛け て算出した金額を売上税額とすることができます。」

何を言っているか要約すると

  1. 適格請求書を保存していることが条件です。
  2. 相手方に交付した適格請求書に書いてある消費税額の合計に100分の78をかけた金額=売上税額としていいです。

この2点です。

1.の方は良しとして、2.の方がいまいち要約できてませんね。

先ほどの設例1を例にとって説明しましょう。

設例1では、野菜の売上が税込で108万円でした。

もちろん適格請求書か適格簡易請求書を交付しています。

適格請求書の合計額欄には、例えばこんなふうに記載されていると思います。

「(8%対象 40,000 円 消費税 3,200 円)」

適格請求書は、税率ごとの消費税額を記載するのは必須でしたね。

2.をさらに2段階に分割してみましょう。

  1. あなたが保存しているすべての適格請求書に記載されている消費税額を合計してください。
  2. その合計額に100分の78をかけた金額=売上税額です。

設例1のとおり税込108万円の売上があったら、適格請求書の消費税の合計額は8万円に近い数字になると思います。

8万円としたら、

8万円×78/100=6万2,400円

ということで、割戻し計算と同じ数字が算出されました。

ここでひとつ注意点があります。

割戻し計算と積上げ計算とでは、必ずしも同じ売上税額にはなるとは限りません。

というのも端数処理があるためです。

リーフレットの「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)」の「(1) 適格請求書の記載事項 」 にも

(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)

と記載されています。

端数処理の方法については、

適格請求書の記載事項である消費税額等については、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行います(新消令70の10、インボイス通達3-12)。
なお、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができます。

(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問37(適格請求書に記載する消費税額等の端数処理)

 このように、「切上げ、切捨て、四捨五入、どれでもいいよ」とされています。

一般的には1円未満切り捨てが多いように思います。

次のような例を考えてみましょう。

設例2
  1. 1パック税込360円(本体価格334円、消費税26円)のイチゴを、30人のお客さんがそれぞれ1パックずつ買っていきました。
  2. 売上(税込み)は
    360円×30=10,800円
    となります。
  3. 30人のお客さんにそれぞれ適格請求書を交付しているので、
    「8%対象 360 円(税込) 消費税 26 円」
    と記載された適格請求書が30枚保存されています。
  4. この場合、売上税額を割戻し計算積上げ計算で算出した場合、どうなるでしょうか?
  • 割戻し計算の場合

10,800円×100/108=10,000円
10,000円×6.24%=624円(売上税額)

  • 積上げ計算の場合

26円×30枚=780円

780円×78/100=608.4円(売上税額)

というわけで、売上税額

割戻し計算の場合→624円

積上げ計算の場合→608.4円

と、同じ金額になりません。

そりゃそうです。

適格請求書1枚につき端数を切り捨てしてますから、数字が変わってくるのは当然と言えば当然なんですね。

設例2はごく少額なので「たった6円の差」に見えますが、大手スーパーになると看過できない大金になってきます。

なので、スーパーなどでは、割戻し計算か積上げ計算かどちらを選ぶかというと、積上げ計算の方が有利でしょうね。

他の業種だと、

「割戻し計算しても、積上げ計算しても税額に大差ない」

「いちいち請求書の消費税額なんて拾ってられない。その人件費の方が高い」

といった理由で、原則どおり割戻し計算を選択するところもあるでしょう。

有利な方を選びたいですね。

なお、売上税額の計算に「積上げ計算」を選択した場合は、仕入税額の計算時にも「積上げ計算」を選択しないといけません。

売上税額の計算に「割戻し計算」を選択した場合は、仕入税額の計算時には、「割戻し計算」「積上げ計算」どちらでも選択することができます。

なぜこんな決まりになっているのでしょうか?設例2で見たように、割戻し計算と積上げ計算とでは、積上げ計算の方が税額が低くなります。

  • 割戻し計算→税額高い
  • 積上げ計算→税額低い

これは売上税額でも仕入税額でも同じです。

税務署に納める税額は下記の式のとおりです。

税務署に納める税額=売上税額-仕入税額

なので、

売上税額を積上げ計算仕入税額を割戻し計算にすると、

税務署に納める税額=低い売上税額-高い仕入税額

となるので、圧倒的に有利になっちゃいますよね。

みんなこれを選んでしまいます。

おそらくこれを抑制するために、売上税額の計算に積上げ計算を選択する場合に規制をかけているんですね。

消費税額等の記載がない適格簡易請求書の交付を受けたとき

先ほどの設例2の積上げ計算の場合は、適格請求書で消費税額が明記されているケースでした。

ですが、適格簡易請求書の場合、消費税額が明記されているとは限りません。

リーフレットの「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)」の「(1) 適格請求書の記載事項 」 の(注)に、適格簡易請求書の記載について、次のように書いてあるんですね。

「適用税率」 「消費税額等」はいずれか一方の記載で足ります。

なので、適用税率だけ記載されていて、消費税額が記載されてないパターンの適格簡易請求書が存在するというわけです。

適用税率だけ記載されていて、消費税額が記載されてないパターン」ってどういうものか?と言うと、設例2では、適格請求書に

8%対象 360 円(税込) 消費税 26 円

と記載されていたとしました。

この記載が

8%対象 360 円(税込)

となるということです。

適用税率である「8%」は残して、「消費税 26 円」が消えてしまいました。

では、消費税額の記載がない場合、どうやって積上げ計算すればいいでしょうか?

 Q&Aから引用します。

適格簡易請求書に記載された金額が、税込金額の場合は、その金額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を掛けて消費税額等を算出し、また、税抜金額の場合は、その金額に100分の10(軽減税率の対象となる場合は100分の8)を掛けて消費税額等を算出し、その金額を基礎として、仕入税額の積上げ計算を行います。

 (出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問80(適格請求書などの請求書等に記載された消費税額による仕入税額の積上げ計算)

 要するに、自分で計算して消費税額を算出せよと書いてあります。

 例えば、適格簡易請求書に「8%対象 360 円(税込)」と記載されていた場合、

360円×8/108=26.6666→26円

といったような具合ですね。

6 免税事業者の登録手続

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年 10 月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

「消費税課税事業者選択届出書」って何でしょう?

そもそも免税事業者とは、課税売上高が1,000万円以下のため、納税の義務が免除された事業者のことでした。

ですが、課税売上高が1,000万円以下でも、課税事業者となることを選択できるんです。

えー!何のために?

と思われるでしょうが、例えば輸出業者は、外国に商品を売って売上を上げます。

消費税は日本国内の取引にかかる税なので、この場合売上に消費税がかかりません。

一方、輸出業者の仕入が国内の取引であれば、消費税はかかります。

つまり、こういった輸出業は、「売上税額は0がだけど、仕入税額はかかっている」という状態になります。

売上税額<仕入れ税額の場合、消費税が還付されます。

もちろん免税事業者では還付になりませんので、課税事業者にならないといけません。

こうした理由から、課税売上高が1,000万円以下で課税事業者を選択する事業者がおられるのです。

どうやったら課税事業者になれるのかと言うと「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出します。

(参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁

インボイス制度が始まると、免税事業者は取引上不利になることが予想されますので、適格請求書発行事業者になりたいと考えている免税事業者もおられるんじゃないかと思います。

その場合、原則的には下のとおり2ステップの手続きが必要です。

  1. 「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出する。
  2. 「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する。

ただし、経過措置として令和5年 10 月1日を含む課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、「1.は不要ですよ、2.のみでいいですよ」ということがリーフレットに書かれています。

適格請求書発行事業者の登録を促したいんでしょうね。

 

それでは以上になります。

長々となりましたが、お付き合いくださいましてありがとうございました。