【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その5
インボイス制度とやらの導入が間近に迫っているとは聞いたもののよくわからない。。。
「インボイス」で検索したら国税庁のHPに行き当たったが、読んでも理解できない。。。
国税庁も周知のために親切にリーフレットをPDFで配布してるけど、リーフレットも難しい。。。
そんな方のためにリーフレットの解説をしています。
どんなリーフレットを解説しているかというとこちらです。
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)
そんな解説もこれで5回目になります。
長丁場になっていますがどうぞお付き合いくださいませ。
(過去記事)
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その1 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その2 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その3 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その4 - 知ラナイモノが多すぎる
今回は、前回取りこぼした適格簡易請求書についてお話していきたいと思います。
適格簡易請求書とは?
リーフレット2頁「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点) 」の導入文の※印から引用します。
※ 不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等については、記載事項を簡易なものとした「適格簡易請求書」を交付することができます。
まずここに「適格簡易請求書」という言葉が出てきます。
「適格簡易請求書」がどんなものなのかというと、「(1) 適格請求書の記載事項 」点線で囲われた(注)に書かれています。
(注) 適格簡易請求書の記載事項は上記①から⑤となり(ただし、「適用税率」「消費税額等」はいずれか一方の記載で足ります。)、上記⑥の「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」は記載不要です。
適格請求書の記載事項と何が違うかというと以下の2点です。
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が不要
- 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率のどちらかの記載でいい
この2点です。
1.については、先に引用した導入文の※印の部分にあるように、想定されているのが「不特定多数の者に対して」行う取引なんですね。
例えば、レシートも適格請求書に含まれますが、スーパーで買い物したときにもらうレシートに買ったお客さんの「氏名又は名称」が記入できるかというと、絶対無理ですよねw
もしレシートに自分の名前が書いてあったりしたら、逆に怖いですよね。
どこから個人情報漏れたんだー!ってなります。
こういった不特定多数の人を対象に取引をする場合は、相手方の「氏名又は名称」は不要ですよと言ってくれてます。
次に2.ですが、適格請求書では、「税率ごとに区分した消費税額等」も「適用税率」もどちらも記載が必須でした。
適格簡易請求書ではどちらかのみで大丈夫です。
もちろん両方記載してもOKです。
(3) 適格請求書の交付方法の特例
媒介又は取次ぎに係る業務を行う者(媒介者等)を介して行う課税資産の譲渡等について、委託者及び媒介者等の双方が適格請求書発行事業者である場合には、一定の要件の下、媒介者等が、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書を委託者に代わって交付することができます。
媒介者交付特例です。
何のことかさっぱりわかりませんね!
私は一読しても全然わかりませんでしたw
要するに委託販売という特殊な取引を行う場合の特例なんですね。
そもそも委託販売って何ですか?という話です。
委託販売って何?
通常の売買取引はこんな感じだと思います。
[設例1]通常の売買取引
あなたが八百八という八百屋さんだったとします。
農家のコロスケさんから野菜を仕入れ、店頭に並べ、それをお客さんが買う、というのが一般的な取引の形ですよね。。
安く買って、利益を載せて売る。
これが通常の売買取引になります。
委託販売は例えるとこうなります。
[設例2]委託販売
あなたが某フリマアプリで服を売りたいと思いました。
ですが、あなたは某フリマアプリを使ったことがなく、やり方が全くわかりません。
そこへ某フリマアプリを普段から使っている友達のトンガリくんがやって来て、「代わりに売ってあげるよ。」と言ってくれました。
ただ某フリマアプリの手数料もあるので、あなたはトンガリくんにいくらかの手間賃を払うことにしました。
と、こんな具合になります。
「某フリマアプリ」を「店舗」と読み替えてもらったら、より委託販売の実態に近くなると思います。
通常の売買取引と何が違うのかというと、商品の所有権が誰にあるかが違います。
通常の売買取引と委託販売の違い
上記の2つの設例で、直接お客さんに売った人のは誰でしょうか?
[設例1]→あなた
[設例2]→トンガリくん
では、商品の所有権は誰にあるでしょうか?
[設例1]→あなた
[設例2]→あなた
表にするとこんな感じになります。
直接お客さん に売った人 |
商品の所有権 | |
[設例1] | あなた | あなた |
[設例2] | トンガリくん | あなた |
[設例1](通常の売買取引)の場合は、お客さんに売った人と商品の所有権は一致しています。
で、委託販売の場合、適格請求書はどうなるの?
[設例2]で言うと、お客さんに適格請求書を交付するのは、本来的にはあなたになります。
トンガリくんは、あなたの代わりに某フリマアプリで出品しただけなので、この取引はあなたとお客さんとの間の取引だということはご理解いただけると思います。
ここで、某フリマアプリではなくトンガリくんの店舗で委託販売したと考えてみましょう。
あなたはトンガリくんがどんな人に販売したかわかりませんよね。
また、買った側も、トンガリくんのお店で買ったにも関わらず、「適格請求書の交付は別な人です」と言われても困っちゃいますよね。
こういった事情を踏まえて、媒介者交付特例といった特例が認められています。
媒介者交付特例とは?
媒介者公布特例とは、[設例2]の場合で言うと、トンガリくんがもう自分の名前で適格請求書を交付することです。
まあ、それが手っ取り早いですよね。
ただし、要件や【受託者の対応】、【委託者の対応】が決まってますので、これから説明します。
要件
1 委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
2 委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問30(媒介者交付特例))
[設例2]で言うと、あなたもトンガリくんも適格請求書発行事業者であること。
それに、あなたがトンガリくんに自分が適格請求書発行事業者であることを通知していることですね。
そんなに難しくないと思います。
【受託者の対応】と【委託者の対応】
Q&Aから引用します。
【受託者の対応(新消令70の1213)】
1 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を保存する。
2 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を速やかに委託者に交付又は提供する。(略)
【委託者の対応(新消令70の124)】
1 自己が適格請求書発行事業者でなくなった場合、その旨を速やかに受託者に通知する。2 委託者の課税資産の譲渡等について、受託者が委託者に代わって適格請求書を交付していることから、委託者においても、受託者から交付された適格請求書の写しを保存する。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問30(媒介者交付特例))
具体的にはどういうことでしょう?
このことは、リーフレットの図に示されています。
この図を[設例2]に沿って説明していきましょう。
図中の「委託者」は「あなた」です。
「受託者」は「トンガリくん」、「買手」というのが「お客さん」です。
順を追って説明しましょう。
- あなたはトンガリくんに服の販売を委託しました。(販売委託)
- トンガリくんがお客さんにあなたの服を売りました。(商品の販売)
- トンガリくんは、トンガリくんの名前でお客さんに適格請求書を交付しました。
- トンガリくんは、3.で交付した適格請求書の写しを保存しました。
- トンガリくんは、3.で交付した適格請求書の写しをあなたに交付しました。
- あなたは、5.でトンガリくんから交付された適格請求書の写しを保存しました。
以上です。
トンガリくんがだいぶ手間ですね。
トンガリくんは、写しを含めて適格請求書を3枚作らないといけませんね。
- お客さんに交付する分
- 自分で写しを保存する分
- あなたに写しを交付する分
それ以外は、特別複雑なものではないと思います。
今回はここまでにします。
ではまた次回。