【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その7
インボイス制度とやらの導入が間近に迫っているとは聞いたもののよくわからない。。。
「インボイス」で検索したら国税庁のHPに行き当たったが、読んでも理解できない。。。
国税庁も周知のために親切にリーフレットをPDFで配布してるけど、リーフレットも難しい。。。
そんな方のためにリーフレットの解説をしています。
どんなリーフレットを解説しているかというとこちらです。
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)
そんな解説もこれで7回目になります。
長丁場になっていますがどうぞお付き合いくださいませ。
(過去記事)
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その1 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その2 - 知ラナイモノが多すぎる
- 「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その3 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その4 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その5 - 知ラナイモノが多すぎる
- 【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その6 - 知ラナイモノが多すぎる
前回に引き続いて、リーフレットの3頁目「4 仕入税額控除の要件(買手側の留意点) 」の「(3) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合 」から解説していきたいと思います。
(3) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
仕入税額控除って何?
復習になりますが、この適格請求書保存方式ってどんな制度かと言うと、「複数税率に対応した消費税の仕入税額控除」の制度でした。
事業者(会社)としては2つの立場があります。
売手と買手の2つですね。
リーフレットで言いますと「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点) 」で、売手=適格請求書を発行する立場としての留意点について述べられていました。
次の「4 仕入税額控除の要件(買手側の留意点) 」では、買手=適格請求書をもらう立場としての留意点が述べられています。
買手としては、適格請求書をもらってどうしたいのかと言うと、どこからどう転がり落ちても消費税の仕入税額控除がしたいんです。
仕入税額控除って何かと言うと、例えば文房具を仕入れて売る場合を考えてみましょう。
- 77円(税込)の消しゴムを仕入れました。
- この消しゴムを110円(税込)で売りました。
こんな状況を想定してみましょう。
2.でお客さんから預かった消費税は10円です。
この10円をそのまま税務署に納めるのかと言うとそうではありません。
仕入れにかかった消費税分は差っ引いてOKなのです。
仕入れにかかった消費税とは、つまり、1.のときにかかった消費税7円のことですね。
なので、税務署に納めるのは10円-7円=3円になります。
この仕入にかかった消費税を差っ引くことを仕入税額控除と言います。
この仕入税額控除ができないとなったら、10円まるまる税務署に納めないといけません。
今の例は単位が小さいので「たかが7円」と思うかもしれませんが、大きな取引になれば7万円、700万円、大企業であれば7億円と言った規模の話になってもおかしくありません。
仕入税額控除を受けたい人がしなければならない2つのこと
消費税を納めるとき税務署に申告します。
このとき申告内容が嘘ではない証拠を残しておかないといけません。
そのことはリーフレットの冒頭に書いてありますね。
適格請求書等保存方式の下では、適格請求書などの請求書等の交付を受けることが困難な一定の場合(下記(3)参照)を除き、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。
2種類の書類を保存しないといけません。
帳簿と請求書等ですね。
帳簿も記載事項が決められていたり、「請求書等」の範囲については、前回お話しましたので、くわしくはそちらをご参照ください。
(参照:【わかりやすく解説!】「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その6 - 知ラナイモノが多すぎる)
原則は帳簿と請求書等の2つを保存しないといけませんが、何事にも原則があれば例外があります。
請求書等の保存は不要で、帳簿のみでいいよ、とする場合があります。
どんな場合かと言うと下記のとおりですね。
請求書等の交付を受けることが困難な以下の取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
[1]適格請求書の交付義務が免除される前記3(2)①④⑤に掲げる取引
[2]適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引[3]古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を取得する取引
[4]適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品(棚卸資産に限ります。)を購入する取引
[5]従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ
5パターンありますが、大きく2つに分けることができます。
[1]〜[2]と[3]〜[5]との2つに分けられます。
順にご説明しましょう。
[1]〜[2]適格請求書の交付義務が免除されるケース
[1]にある「前記3(2)①④⑤」とは何だったか思い出してみましょう。
まず「前記3(2)」というのはこのリーフレットの「3 適格請求書発行事業者の義務等(売手側の留意点)」の「(2) 適格請求書の交付義務免除」のことですね。
こちらは、適格請求書発行事業者が適格請求書を交付しなくていいとされているケースですね。
要するに、売手が適格請求書を発行しなくていいんです。
となると、買手はもちろん適格請求書を受け取ってません。
これでは適格請求書の保存ができるはずないですよね、存在すらしてないんですから。
どんな場合だったかおさらいしましょう。
①④⑤を引用します。
①公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります。)
②〜③ 略
④自動販売機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限ります。)
⑤郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
詳しくはすでに「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その3で説明していますので割愛します。
なお、公共交通機関や自動販売機などの場合であっても3万円以上になると適格請求書の保存が必要になります。
自動販売機で3万円以上って見たことないですが、そんなんあるんでしょうか?
自動サービスのコインロッカーも含まれるので、1日300円としたら100日連続使用で3万円とかそういうレアケースでしょうか?
それとも、店舗内に自動販売機を設置して、3万円以上の商品でも自動販売機から買わせる方式にしてインボイスを逃れようとする事業者が現れてくることを見越しての規定でしょうか?
[2]については、下に引用したQ&Aをご参照ください。
公共交通機関である鉄道事業者から適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を記載した乗車券の交付を受け、その乗車券が回収される場合は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(新消令491一ロ)。
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問69(公共交通機関による旅客の運送))
具体的にはこういう場合が想定されています。
- いったんは乗車券という形で適格簡易請求書をもらいました。
- でも、その乗車券は回収されてしまって手元に残りませんでした。
こんな場合ですね。
こんなときは、帳簿のみの保存でいいとなってます。
[3]〜[5]個人に費用を支払うケース
[3]〜[5]はいずれも個人にお金を支払う場合です。
[3]は「古物営業、質屋又は宅地建物取引業」なので、個人から中古車や中古住宅などを買い入れることがあるでしょう。
[4]は「再生資源又は再生部品(棚卸資産に限ります。)を購入する取引」とあるので、リサイクルのことですね。
ダンボールや空き缶の回収などをイメージするといいのではないでしょうか。
[5]は従業員が相手方となる費用ですね。
給料は不課税ですが、旅費や通勤手当は課税取引になっていると思います。
個人が適格請求書を交付するわけがありませんので、最初から帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられるようにしています。
なお、今見てきた取引は、請求書等が不要で帳簿の保存のみで仕入税額控除が受けられるんですが、一点注意事項があります。
なぜ請求書が不要なのか、その理由(どの取引に該当するか)を帳簿に明記しないといけません。
帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要とな ります。
・ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
(出典:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問74(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項))
例えば公共交通機関の費用が3万円未満だった場合なら、帳簿に「3万円未満の鉄道料金」と記載するなどです。
個人への支払いがイメージしやすいのでそのように説明していますが、[3]と[4]については取引の相手方を「適格請求書発行事業者でない者」としていますので、免税事業者との取引も該当すると思います。
ちなみに、ご存知の方も多いかと思いますが、免税事業者とは何かと言いますと、以下の引用をご覧ください。
課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます
(出典:No.6501 納税義務の免除|国税庁)
課税売上高が1000万円以下で、消費税の納税の義務を免除された事業者のことを免税事業者と呼んでいます。
現行とインボイス制度開始後
先ほど見た「(3) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」の最後に(注)があります。
(注) 現行、「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は、法定事項を記載し た帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨が規定されていますが、適格請求書等保存方式の導入後は、これらの規定は廃止されます。
実は現行は3万円未満の課税仕入れについては、かなり広い範囲で仕入税額控除が認められていました。
(課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等)
第四十九条 法第三十条第七項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。一 法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が三万円未満である場合
(出典:消費税法施行令 | e-Gov法令検索)
それがインボイス制度が始まってしまうと、公共交通機関か自動販売機以外は、3万円未満でも請求書の保存が必要になってしまいます。
残念ですが、これが現実なので受け入れざるを得ませんね。
《免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置》
リーフレットの青線の囲み枠から引用します。
適格請求書等保存方式の導入後は、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除を行うことができません。
ただし、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合には、次の表のとおり、一定の期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。
インボイス制度が始まると、原則免税事業者や消費者から仕入れても仕入税額控除が受けられなくなります。
この原則に対する例外が先ほど解説した「4 仕入税額控除の要件(買手側の留意点)」の「(3) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合」でした。
(ちなみに現行は、相手方が課税事業者だろうが免税事業者だろうが、仕入税額控除できます。)
やっぱり事業者としては仕入税額控除は受けたいわけです。
でないと消費税を必要以上に納税することになりますから。
ということは、必然的に免税事業者との取引をやめようという動きになりますよね。
全く同じ取引をしても、相手先が適格請求書発行事業者なら仕入税額控除できて、免税事業者なら仕入税額控除できないとなったら、明らかに免税事業者の方が不利ですからね。
このままでは免税事業者が圧倒的に不利な立場に立たされてしまうということで、経過措置があります。
要するに救済措置ですね。
免税事業者にかかる仕入税額控除がいきなりゼロになるのではなく、80%なり50%なり段階を踏んで下げていこうとするものです。
インパクトを弱めようという意図ですね。
一応、「区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿」が条件となっています。
まあ、でも、経理の実務者からすると、これはこれで厄介なんですよね。
- 相手方を適格請求書発行事業者と免税事業者に分ける
これはインボイス制度が始まれば、いずれにせよ外せないことなので良しとします。
しかしですね、
- 期間によって、免税事業者にかかる仕入税額控除が80%になったり50%になったりする
これが厄介ですね。
いっそ「免税事業者にかかる仕入税額控除はありません」という方が手間がないですね。
それでは今回はこれまでにします。
お疲れ様でした。
ではまた次回。