「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」の解説その2
さあ、前回から引き続いて
消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)(令和2年6月改訂)(PDF/459KB)
を読んでいきましょう!
1 適格請求書とは
「適格請求書」は請求書か?
適格請求書とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。
※ 請求書や納品書、領収書、レシート等、その書類の名称は問いません。
まずは第1パラグラフです。
適格請求書(=インボイス)の定義づけですね。
ちなみに、「適格請求書」と「インボイス」とどちらの名称をメインに使うかですが、別のリーフレット(令和3年10月1日から登録申請書受付開始!(リーフレット)(令和2年10月))では、「インボイス」を使っていました。
ですが、今取り上げているリーフレットでは「適格請求書」を使用していますので、この記事でも「適格請求書」を使用していきます。ご了承ください。
引用の中の太字アンダーラインの部分は、適格請求書の目的について明白にしています。
どのように「適用税率」や「消費税額等」を伝えるかは、追い追い具体例が出てきますので、そのときに確認しましょう。
注目はその次ですね。
一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。
※ 請求書や納品書、領収書、レシート等、その書類の名称は問いません。
な、なんと!
今まで「適格請求書」という名称から、請求書の一種と思っていましたが、請求書だけではありませんでした!
納品書、領収書、レシート、その他、書類の名称を問わず、これら全てが適格請求書です!
このことは、しっかりと脳に刻み込んでおきましょう。
2 適格請求書発行事業者登録制度
「適格請求書発行事業者」って何ですか?
第1文を引用します。
○ 適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。
ほうほう。
とりあえず「適格請求書発行事業者」って何ですか?とツッコミながら次の文に移りましょう。
○ 適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、登録を受ける必要があります。なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。
適格請求書発行事業者になるには、税務署に申請して、登録を受ける必要があると書いてありますね。
逆に言えば、税務署に登録さえしてもらえれば適格請求書発行事業者になれるということです。
ただし、課税事業者でないと登録が受けられない、すなわち適格請求書発行事業者になれないと、なお書きにあります。
大注目!インボイス制度の前後で変わること
そもそも課税事業者って何?ってところなんですが、課税事業者というのは消費税を税務署に納めている事業者(会社)のことです。
対義語は免税事業者です。
何で免税されてるところがあるのかと言うと、こんな基準があります。
消費税では、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます
(出典:No.6501 納税義務の免除|国税庁)
リーフレットの冒頭に書いてあったとおり、インボイス制度は「消費税の仕入税額控除の方式」なんですが、大注目はインボイス制度の開始前と後とで免税事業者からの仕入税額控除の取り扱いが変わるってことです。
どういうことなんでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
仕入税額控除の仕組み
例えば、ここに鉛筆工場を経営しているコロスケさんと剛田商店という文房具を売るお店があったとします。
都合上、コロスケさんは、無から有を生み出すように、経費をかけずに鉛筆を錬成することができたとします。
この鉛筆を剛田商店に1本770円(税込)で売ったとします。本体価格700円、消費税70円です。
剛田商店はこれをお客さんに売って、1,100円(税込)の売上があったとします。本体価格1,000円、消費税100円です。
この例では、コロスケと剛田商店の2社が出てきました。
この2社の消費税の納税について考えてみましょう。
納税額=売上にかかる消費税-仕入にかかる消費税
でしたね。
仕入にかかる消費税を売上にかかる消費税から差っ引くことを仕入税額控除と言いましたね。
[設例1]2社とも課税事業者であった場合
納税額は以下のとおりになります。
- コロスケ 770円の売上だけなので、消費税70円をそのまま納税します。
- 剛田商店 770円で仕入れて、1,100円で売ってます。仕入れのときに支払った消費税70円が仕入税額控除の対象になるので、100-70=30円の納税になります。
- 税務署には合計で100円の消費税が納付されます。
では、次の場合はどうでしょう。
[設例2]コロスケさんが免税事業者の場合
- コロスケ 免税事業者なので納税しません。
- 剛田商店 先ほどと同じように100-70=30円を納税します。
- 税務署には30円の消費税しか納付されません。
おやおや、税務署に入る税額が減りましたね。
その分コロスケさんは儲かりました。
剛田商店さんは何も変わっていません。
税務署が取りっぱぐれてるような気がしますが、これでいいんでしょうか?
結論から言いますと、インボイスが始まる前はこれで問題ありませんでした。
インボイスが始まると、そうも行きません。(税務署が取りっぱぐれません。)
説明しましょう。
インボイス制度が始まるとどうなるか
先ほどの[設例2]で疑問なのは、剛田商店の処理ですね。
免税事業者からの仕入でも仕入税額控除してもいいのかという点です。
こちらの国税庁HP(No.6455 免税事業者や消費者から仕入れたとき|国税庁)から引用しましょう。
課税仕入れに係る相手方が課税事業者であることを要件としていません。
免税事業者から仕入れた場合でも仕入税額控除の対象となるとはっきり書いてありますね!
ということは、一連の処理に問題はありません。
ですが、インボイスが始まるとどうなるでしょうか?
[設例2]で言うと、剛田商店の処理が変わってきます。
[設例3]コロスケさんが免税事業者で、インボイスが始まった場合
- コロスケさんは免税事業者のため、適格請求書(インボイス)を発行できません。
- 適格請求書がないと仕入税額控除ができないので、剛田商店は売上にかかる消費税100円をそのまま納税することになります。
- 税務署に100円の消費税が納税されます。
[設例2](インボイス前)と変わったのは、剛田商店の納税額が上がった点ですね。当然その分税務署に入る税額も上がりました。
もし、コロスケさんが免税事業者でなく、適格請求書発行事業者であれば、どうなっていたでしょうか?
剛田商店は仕入税額控除ができるようになり、[設例1]と同じ処理になります。
このとき剛田商店はどう考えるでしょうか?
免税事業者との取引を考え直すのではないでしょうか。
実際には、経過措置がありますので、免税事業者からの仕入税額控除がいきなり0になることはありませんが、インボイスを発行できないと取引が減るなど困ったことになるのは容易に想像できますね。
~適格請求書発行事業者の申請から登録まで~と 《登録申請のスケジュール》
青い線と点線で囲われた枠の中に、〜適格請求書発行事業者の申請から登録まで〜と《登録申請のスケジュール》が記載されていますが、3回にわたって解説した登録申請書受付開始リーフレットと内容が重複しますので、今回は割愛します。
では、また次回。