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【徹底検証!】地方公務員はiDeCoに加入すべきか?本当にメリットありますか?その4【地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?】

地方公務員がiDeCoに加入すべきか否かを検討します。

大まかな流れは下記のとおりです。

  1. iDeCoとは?
  2. iDeCoのメリット・デメリット
  3. 地方公務員はiDeCoのメリットを享受できるか?
  4. 地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?

本日の記事では、上の3について解説していきたいと思います。

◆過去記事

 4.地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?

マスヲは考えていた。

先日ナミペイに指摘され、退職所得控除の計算方法を調べ、退職金だけで退職所得控除の枠を使い切ってしまい、iDeCoは退職所得控除を受けられないことがわかった。

iDeCoで550万円一括受け取りしたとしたら、所得税と住民税合わせて約50万円の税金がかかる計算になった。

だが、掛金で控除される所得税の方が大きいことが判明した。

掛金は公務員の上限12,000円/月として、年間144,000円。

マスヲの場合所得税が20%、住民税が10%なので

144,000円×30%=43,200円

が節税になるのである。

受け取り時に50万円の税金がかかるとしても、毎年43,200円節税できれば12年で採算がとれる。

検討の結果、確かに退職所得控除のメリットは受けられないが、iDeCoに加入する方がお得であるという結論に達した。

しかしである。

マスヲの心に50万円はずっしりと重くのしかかっていた。

全く税金がかからないと思っていた。

これが本音である。

誰も騙していないのに騙された気分である。

実際、先にiDeCoを始めているアナゴくんはこのことに気づいていないだろう。

30年後にびっくりしてしまうだろう。

こんな長期のドッキリ食らいたくない。

50万円というのも小さくない額である。

マスヲは家で晩酌をするのが日課である。

そのつまみは自分で用意する。

最近のブームはちくわであるが、これを帰宅途中のスーパーで購入している。

そのとき必ず見切り品のコーナーをチェックするようにしている。

ちくわは割と見切り品となっていることが多いのだ。

半額になっていて、100円が50円で買えるのなら、安い方がいいに決まっている。

毎日見切り品のちくわを買うとして、日々50円の節約で、そのトータルが50万円になるには何日かかるだろう?

50万円÷50円/日=10,000日

10,000日は何年だろう?

10,000日÷365日=27.39年!?

ちまちま節約しても50万円の節約になるのは27年先なのだ。

見切り品を買うとき、感じなくてもいい惨めな気持ちになるのだが、これを27年も繰り返すと思うと、暗澹たる気持ちになってきた。

計算するんじゃなかったと早くも後悔の気持ちが立ってきた。

家の呼び鈴が鳴った。

誰だろう?

ノリズケであった。

この妻の親類(妻とどういう血縁なのか知らない)は、出版社に勤めており、担当している作家が近所に住んでいるらしく、たまに家に寄ってくるきわめて図々しい野郎である。

さりとて妻の実家に身を寄せているマスヲの立場からこの来客を拒む権利はないし、義父からすれば自分よりこのふてぶてしいブタ野郎の方がなじみ深いであろう。

今日は他に人が家にいないのでマスヲが応対するしかない。

「やあ、ノリズケくん。また先生のところかい?」

「いやいや、今日はおじさんとマスヲさんにお話を伺いに来たんですよ」

義父は釣りに出かけているため、マスヲが話を聞くより選択肢がない。

用があるならアポくらい取れや。

逆にその日に用事入れるわ。

「お義父さんは出かけているから、僕でよければ話を聞くよ。上がって」

「あざーす。急にすみませーん」

厚顔無恥とはこのことだ。

「マスヲさんは、役所勤めですよね。公務員の定年延長について当事者にお話を聞きたくて」

定年延長ね。

職場で通知が供覧されていたのを思い出した。

みんなギャアギャア言っていた。

いわく、そんな歳になってまで働きたくないだの、それだったら早期退職するだの。

今でも再任用制度と言って、60歳で定年退職し、退職後すぐ任用され働くことができる制度、これを利用している人が多い。

再任用職員となるかどうかは任意であるが、年金の受給年齢が65歳からなので、お金に余裕がある人や健康に問題がある人以外は、大体再任用職員となる。

定年延長と言ったって再任用とどう違うかマスヲにはよくわからなかった。

違いと言えば……

「退職金がもらえるのが遅くなりますね」

ノリズケが言った。

そうなのである。

違いと言えば、退職金の受け取り年齢が60歳から65歳になることくらいだとマスヲは思っている。

しかし、それがどのように影響があるのかよくわからないでいた。

60歳で退職金を受け取ってローンを返済する予定もなく、「豪華客船で行く世界一周クルーズ」の予定もない。

「困るよね、もらえると思ってたものがもらえないと」

ノリズケには無難な返事をした。

とにかく波風を立てず、大勢の意見に寄り添うのがマスヲの処世術だ。

「そう思うでしょ?退職金を遅く受け取るメリットをご存じですか?」

だんだん、マスヲさんの性格が悪くなっている気もしますが、すみませんでした。

前回検証したように、公務員の場合、退職金が多いため、iDeCoの3つの税優遇のうちの1つ、受け取り時の退職所得控除がなくなる可能性が高いことがわかりました。

物語の中でも語られているように、概算見積でiDeCoで550万円受け取れるとしたら、税金で50万円くらい持っていかれるとのことでした。

マスヲさんが50万円のことをくよくよ考えていると、ノリズケさんがやって来て地方公務員の定年延長と退職金の5年ルールについてマスヲさんの意見を伺ってました。

では、地方公務員の定年延長と退職金の5年ルールとは何なのか?

その2つがiDeCoの受け取りにどのように関係してくるのでしょうか?

地方公務員の定年延長

令和4年度からの国家公務員の定年引上げ(令和2年通常国会に法案提出)に伴い、地方公務員の定年も60歳から65歳まで2年に1歳ずつ段階的に引き上げられることを踏まえ、地方公務員についても国家公務員と同様に以下の措置を講ずる。

(略)

給与に関する措置
○ 国家公務員の給与及び退職手当について以下の措置が講じられることを踏まえ、地方公務員についても、均衡の原則(地方公務員法第24条)に基づき、条例において必要な措置を講ずるよう要請する。
・ 当分の間、60歳を超える職員の給料月額は、60歳前の7割水準に設定する。
・ 60歳に達した日以後に、定年前の退職を選択した職員が不利にならないよう、当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定する。

(出典:地方公務員法の一部を改正する法律案の概要

令和4年から地方公務員の定年の年齢が2年に1歳ずつ引き上げられ、最終的には65歳が定年年齢になります。

役職定年制(60歳を過ぎたら管理職から外す制度)の導入なども気になりますが、ここは退職金(退職手当)に焦点を絞りましょう。

定年延長により退職金は何が変わるのでしょうか?

退職金は減るのか?増えるのか?

定年延長で退職金が減ってしまうんじゃないか?

ここが一番気になるポイントですね。

役職定年制の導入によって、部長だった人も60歳を過ぎたらヒラに格下げされるなんてこともあるわけで、格下げされたら、給料は7割以下にするよう規定されています。

「ほら!給料が減るんだから、退職金も減ってしまうんじゃないの?」というマスヲさんの声が聞こえてきそうですね。

結論から言いますと、現状の制度設計だと退職金は減らないです。

退職金が減ってしまうなら、みんな60歳で早期退職しちゃいますからね。

定年延長は労働人口の確保が目的なので、早期退職するような制度では元も子もなくなってしまいます。

むしろ退職金は増えます。

まずは退職金の算出方法を抑えていきましょう。

退職金の算出方法

地方公務員の退職金も国家公務員に準じて算出されますので、人事院のサイト(退職手当の支給)を参考にご説明します。

まず、

退職金=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額

こちらの算定式がベースになります。

基本額と調整額を足し合わせたものが退職金になるということですね。

基本額と調整額はそれぞれ算出の方法が違います。

説明します。

基本額

先に引用したカッコ内が基本額の要素ですね。

退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合

分解すると、

  1. 退職日の棒級月額
  2. 退職理由別・勤続年数別支給割合

この2つの要素をかけただけということがわかります。

2.退職理由別・勤続年数別支給割合

退職日の給料に支給割合という割合をかけます。

この支給割合は2つの要素から決まります。

2種類の要素というのが

  • 退職理由
  • 勤務年数

この2つです。

人事院のサイト(退職手当の計算例)の「国家公務員退職手当支給割合一覧」という表を引見てみましょう。

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国家公務員退職手当支給割合一覧(「人事院|退職手当の計算」より引用)

一番左の列が勤続年数ですね。

一番上の行が退職理由になります。

表の見方としては、勤続年数と退職理由が交差するマスがその支給率を示しています。

例えば、退職理由が「自己都合」で勤続年数が「10年」の人の支給割合は5.022だということがこの表からわかります。

この人の給料の月額が20万円だったとしたら、

20万円×5.022=100万4,400円

が退職金の基本額になります。

なお、退職理由が「自己都合」の場合が最も割合が低く、「定年」が高く設定されています。

なお、同じ「定年」でも、11年未満、11年以上25年未満、25年以上と年数により区分されています。

同じ月額で同じ勤続年数でも退職理由によって退職金の額は異なってきます。

例えば、

  • 月額:50万円
  • 勤続年数:30年

で、支給割合は退職理由が

  • 自己都合なら34.7355
  • 定年退職なら40.80375

になります。

退職金額(基本額)を算出すると

  • 自己都合:50万円×34.7355=1,736万7750円
  • 定年退職:50万円×40.80375=2,040万1,875円

になります。

1.退職日の棒級月額

こちらはわかりやすいと思います。

諸手当を含まない基本給という理解でいいと思います。

でもこれが問題ですよね。

役職定年制では、60歳を超えたら給料が7割になると先ほど説明したばかりです。

「やっぱり退職金減るじゃん!」

と思っちゃいますが、安心してください。

救済措置があります。

先に参考として挙げた人事院のサイト(退職手当の支給)の

(4) 基本額の特例

イ  俸給月額の減額改定以外の理由により俸給月額が減額されたことがある場合の特例(退手法第5条の2)

こちらに該当します。

引用します。

在職期間中に、俸給月額の減額改定(いわゆるベースダウン)以外の理由(降格、 俸給表間異動等)により俸給月額が減額されたことがある場合で、特定減額前俸給月額(減額日における当該理由による減額がなかったものとした場合の俸給月額のうち最も多いもの)が退職日の俸給月額よりも多いときは、次の(ア)及び(イ)により算出した額の合計額を基本額とする特例があります。

(ア)特定減額前俸給月額に係る減額日の前日に実際の退職理由と同じ理由で退職したものとし、かつ、同日までの勤続期間と特定減額前俸給月額を基礎として算定した基本額に相当する額

(イ)退職日俸給月額に次の(A)の割合から(B)の割合を控除した支給割合を乗じて得た額

(A)退職日に、退職日までの勤続期間と退職日俸給月額を基礎として退職手当を算定した場合の支給割合
(B)(ア)の算定に用いた支給割合

ちょっと難しいですね。

大筋を言います。

給料が減額された特定の場合には、退職金の基本額を通常でない特例的な計算をします。

給料が減額された特定の場合ってどんな場合かと言うと、いわゆるベースダウン以外の場合です。

ベースダウンというのは、物価が下がったので全体的に給料を減額することですね。

ベースダウン以外の場合には、降格なんかも含まれます。

定年延長で給料が7割になった場合もベースダウンとは違いますので、この特例に含まれると思います。

どのような計算をするのかですが、簡単に言うと2段階にわけて退職金基本額を算出します。(減額前の給料の方が高いままであることが前提になります。)

(1段階目)給料が減額されるまでで、いったん算出

(2段階目)減額後は減額後で算出

具体例で考えてみよう

以下のような条件だった場合を考えてみましょう。

  • 定年延長により60歳定年の予定が65歳の定年になった。
  • 60歳時点で勤続年数が30年
  • 60歳時点の給料は50万円、65歳退職時は35万円

まず、給料が減額される前(60歳)の退職金基本額を算出します。

勤続年数30年で退職理由が定年ですので、支給割合は「国家公務員退職手当支給割合一覧」から40.80375とわかります。

退職金基本額は、支給率に給料月額をかけるので算出式は下のとおりです。

50万円×40.80375=2,040万1,875円

これに給料減額後は減額後で算出してこれに足します。

減額後は60〜65歳なので勤続年数は5年になります。

退職理由は定年ですので、「国家公務員退職手当支給割合一覧」に照らすと支給割合は、4.185とわかります。

したがって減額後の退職金基本額は、

35万円×4.185=146万4,750円

となります。

合計で約2,186万円になりますね。

定年延長前と同じ60歳までの退職金基本額に延長後の5年分の退職金基本額が足されたというイメージですね。

調整額とは?

先に

退職金=基本額+調整額

とご紹介しました。

基本額については上述したとおりです。

では、調整額とは何でしょう?

人事院のサイトから引用します。

調整額は、在職期間中の貢献度に応じた加算額であり、基礎在職期間(退手法第5条の2第2項にある「基礎在職期間」)初日の属する月から末日の属する月までの各月毎に、当該各月にその者が属していた職員の区分(第1号区分~第11号区分)に応じて定める額(調整月額)のうち、その額が多いものから60月分の調整月額を合計した額です。

【退職手当の調整額区分表(給与法適用職員の例)】

区分1 -  指定職(6号俸以上)、これに相当する職員     95,400円 
区分2 -  指定職(5号俸以下)、これに相当する職員     78,750円
区分3 -  行(一)10級、これに相当する職員                70,400円
区分4 -  行(一) 9級、これに相当する職員                65,000円
区分5 -  行(一) 8級、これに相当する職員                59,550円
区分6 -  行(一) 7級、これに相当する職員                54,150円
区分7 -  行(一) 6級、これに相当する職員                43,350円
区分8 -  行(一) 5級、これに相当する職員                32,500円 
区分9 -  行(一) 4級、これに相当する職員                27,100円
区分10- 行(一) 3級、これに相当する職員                21,700円
区分11- その他の職員(非常勤職員を含む。)                      0円

(出典:退職手当の支給

給与の級というのは、ほぼほぼ役職を表しています。

国家公務員給与の実態~ 令和2年国家公務員給与等実態調査の結果概要 ~」の「⑦ 行政職俸給表(一)の級別人員構成比」を見ると、10~9級は、本府省の課長に該当します。

8~7級なら室長、6~5級なら課長補佐、4~3級なら係長、2~1級なら係員といった具合です。

調整額はこういった役職によって加算される金額になります。

例えば、定年したとして、5級であった期間が3年間、4球であった期間が2年間あったとしたら、

32,500円×36月=1,170,000円

27,100円×24月=650,400円

合計182万400円が調整額として退職金に加算されます。

なお、調整額の対象となるのは、勤務期間の中で金額が最大となる60月です。

なので、給料が減額されても、調整額に変わりはありません。

 

ではまた次回この続きをお話ししたいと思います。

本日はお疲れさまでした。