【徹底検証!】地方公務員はiDeCoに加入すべきか?本当にメリットありますか?その5【地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?】
地方公務員がiDeCoに加入すべきか否かを検討します。
大まかな流れは下記のとおりです。
本日の記事では、上の3について解説していきたいと思います。
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【徹底検証!】地方公務員はiDeCoに加入すべきか?本当にメリットありますか?その4【地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?】 - 知ラナイモノが多すぎる
4.地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?
(前回からの続き)
退職金を遅く受け取る、というか定年延長に税制上の利点があるとは知らなかった。
要するに、勤続年数が長くなるのでその分退職所得控除が多くなるのだ。
また、定年延長で5年長く働く分退職金も単純に上乗せになることもわかった。
どうせ60歳では年金はまだもらえなくて、再任用で働くのだ。
定年延長で常勤職員として働く方が有利に決まっている。
「ところでマスヲさんはiDeCo加入してます?」
ノリズケが言った。
知っているのか?
iDeCoには最近加入したばかりだ。
情報が流れたのはナミペイからか?妻からか?
村社会のような旧来の家族制が未だに幅を利かせているこの親戚づきあいと言う名の情報漏洩には吐き気がする。
こういった負の感情を一切表に出さずにマスヲは答えた。
「うん、この間始めたよ」
「公務員だと退職金が多いからiDeCoの受け取りにも所得税がかかっちゃいますよね?」
「さすが!よく知ってるね」
確実にナミペイからだな、とマスヲは思った。
「そこでね、退職金の5年ルールと言うのはご存じですか?」
何だそれ?知らない。
地方公務員の定年延長とiDeCoの受け取りについて
退職所得は税優遇がすごい!
復習になりますが、iDeCoのメリットのうちのひとつが退職所得税の控除対象になることでした。
どういうことかと言うと、まずお金をもらうと所得税という税金がかかります、悲しいことに。
サラリーマンなら毎月の給与明細にいくらか税金用に差し引かれてるのをご覧になったことがあると思います。
退職金をもらったときも例外ではありません。
所得税がかかります。
ただ、退職金って普段の給料の数倍〜数十倍の金額だったりします。
それが普段の給料と同じ税率で税金を取られたら、もうめちゃくちゃえげつない税金の額になってしまいます。
退職金は、「長い間働いてご苦労さまでした」という意味合いもあるので、税金的に優遇したろやないか、というのが退職所得控除です。
どんな優遇の仕方なのかというと、勤続年数によってかなりの金額が控除されます。
控除って何かというと、とにかく引き算するということです。
具体例を挙げて計算してみましょう。
退職金が2,100万円だったとします。
仮にこれが退職金でなく通常の所得税がかかるとしたら、税率40%、控除額が2,796,000円なので、下記のとおりの計算になります。
2,100万円×40%ー2,796,000円=5,604,000円
2,100万円のうち約560万円が税金で持っていかれます。
恐ろしいことに、4分の1以上が税金ですね。
これが退職金となると、計算方法がガラッと変わります。
まず勤務年数によって退職所得控除額が変わります。
勤務年数が38年の場合、退職所得控除額が
800万円+(38ー20)×70万円=2,060万円
退職金から退職所得控除額を引いた額の半分が退職所得の金額になります。
計算式は以下のとおりです。
(2,100万円ー2,060万円)÷2=20万円
この20万円を所得額として所得税の計算をします。
下記のサイトの税額表を参照して計算するとこうなります。
20万円×5%=1万円
2,100万円のうち、税金は何と1万円です。
560万円とえらい違いですね!
退職時にiDeCoの受け取りがある場合はどうなるか?
では、このとき退職金の他にiDeCoの受取が550万円あったとしたらどうなるでしょう?
2,100万円+550万円=2,650万円
これが収入金額になるので、ここから退職所得控除額を引いて半分にした金額が退職所得の金額になります。
(2,650万円ー2,060万円)÷2=295万円
退職所得の金額が295万円の場合、税額は、
295万円×10%ー97,500円=197,500円
約20万円になります。
ここで思い出してほしいのが定年延長です。
退職所得控除額が2,060万円というのは、22歳から60歳まで38年間勤務した場合の金額でした。
38年からさらに5年勤務すると、43年間の勤務になります。
退職所得控除額は、以下の計算式になります。
800万円+(43ー20)×70万円=2,410万円
収入金額が先ほどと同額の2,650万円だとすると、
(2,650万円ー2,410万円)÷2=120万円
120万円×5%=6万円
ということで、税金が6万円で済みました。
退職金の5年ルールとは?
これまでは退職金と同時期にiDeCoの受け取ることを前提にお話してきましたが、受け取り時期をずらせば、退職金にもiDeCoにも退職所得控除がそれぞれ適用されます。
ただし、1日ずらしても適用されるのか、というとそうでもありません。
5年ずらす必要があります。
また、退職金とiDeCoどちらを先に受け取るかも関係しています。
両方とも退職所得控除を受けるために空ける期間は、
というように受け取り方によってずらす期間が変わってきます。
(参考:iDeCo(確定拠出年金)は受取方法で税金に大差が!?なるべく税金が掛からないようにするには | 「断捨リノベ」ファイナンシャルプランナーが監修するライフスタイルマガジン)
定年延長によりより税制上有利な受け取り方ができるようになった
iDeCoも退職金もそれぞれ退職所得控除が適用される受け取り方ためには、
この2通りの方法が考えられます。
現行の制度
- iDeCoの受け取り開始時期=60~70歳
- 地方公務員の退職年齢=60歳
まず、iDeCoを退職金より先に受け取ることはできませんので、上記の1.の方法は不可能です。
2.の方法ですが、例えば早期退職で55歳で退職金を受け取って、iDeCoを70歳で受け取れば15年空けることはできます。
退職45歳→iDeCo60歳ももちろん可能です。
ですが、退職後の生活費が確保できていないとお勧めできません。
近年流行中のFIREを達成できればいいでしょうが、誰にでもできることではないと思います。
令和4年(2022年)4月1日以降
令和4年4月1日から段階的に地方公務員の定年が延長されます。
また、iDeCoにおいても受け取り開始可能年齢が75歳まで拡大します。
- iDeCoの受け取り開始時期=60~75歳
- 地方公務員の退職年齢=60~65歳
この改正によりiDeCoを60歳で受け取り、65歳で退職金を受け取ることが可能になります。
これでiDeCoも退職金もそれぞれ退職所得控除が適用されるというわけですね。
まとめ
5回にわたって長々と地方公務員がiDeCoに加入すべきか検討してきましたが、結論としては下記のとおりです。
- 地方公務員は退職金が大きいので、退職金だけで退職所得控除の枠を使い切ってしまいがち
- それを踏まえても所得税の課税対象となる金額はiDeCoの受取額の半額になるので税優遇の効果は十分にある
- 加えて、地方公務員の定年延長により、iDeCoと退職金と受け取り時期をズラして、iDeCoも退職金も退職所得控除の適用を狙うことができるようになった
要するにiDeCoをやらない理由がないですね。
懸念事項
最後に懸念事項だけお伝えいたします。
「いつまでもあると思うな親と税制」という言葉があるのかないのかは置いときますが、現行の税金の制度がいつまでも続くとは限らないことは頭に置くべきですね。
20歳でiDeCo始めたら、その受け取りは40年後です。
消費税もこの20年で3%から10%になるくらいですので、40年後も同じ税制とは限りません。
税金の制度改正などのニュースには耳を傾け、理解する姿勢が大事です。
iDeCoの出口戦略を練るのは受け取りの10年前からで十分と思いますので、それまではじっくり動静を見守りましょう。
長々となりましたが、お読みいただきありがとうございました。