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【徹底検証!】地方公務員はiDeCoに加入すべきか?本当にメリットありますか?その3【地方公務員はiDeCoのメリットを享受できるか?】

地方公務員がiDeCoに加入すべきか否かを検討します。

大まかな流れは下記のとおりです。

  1. iDeCoとは?
  2. iDeCoのメリット・デメリット
  3. 地方公務員はiDeCoのメリットを享受できるか?
  4. 地方公務員の定年延長でiDeCoのメリットが受けられるのか?

本日の記事では、上の3について解説していきたいと思います。

◆過去記事

3.地方公務員はiDeCoのメリットを享受できるか?

平凡な地方公務員のマスヲは「老後2,000万円問題」に頭を悩ませていたが、iDeCoによりその問題は解決、もしくは軽減される希望を見出した。

すでにiDeCoを始めている同僚アナゴくんに詳しい話も聞いた。

iDeCoは国が推し進めている個人型の年金制度だ。

詐欺まがいのアヤシイ話ではない。

何と言っても税金が安くなるのだ。

マスヲは普段税金のことなどビタイチ考えたことがなかった。

給料明細を見ればいくらか税金で引かれているのは知っていたが、見たところでどうにかなるものではないし、興味がなかった。

年末調整で保険料を申告するのも手間に思っていた。

そんなもの申告して何になるのか、そこまで考えを巡らすことがなかった。

アナゴくんからiDeCo所得税控除の対象だと聞いたときも、年末調整の面倒が増えるのを思って億劫に感じたくらいだ。

しかし、アナゴくんの話を聞いて少し態度を改めた。

アナゴくんは丁寧に具体的な数字で教えてくれた。

公務員のiDeCoの上限は12,000円、これを12か月で年間144,000円。

マスヲの場合、この3割が税金から差し引かれると言う。

すなわち、144,000円×0.3=43,200円 お得であると言うのである。

マスヲは43,200円を嚙み締めた。

43,200円あれば何ができるだろう?

妻と就学前の息子と3人で小旅行ぐらい行けるんじゃないか。

そういえば妻が洗濯機の調子が悪いというので家電量販店に見に行ったが、10万円以上はざらで、ドラム式なら普通に20万を超えてくる。

どうも物価が値上がりしているような気がする。

マスヲは地方公務員である。

雇用が安定していることはありがたいと思っているが、給料は民間の平均かそれ以下だ。

悲しいが給料が急激に上がる見込みはない。

「老後に備えて2,000万円くらい貯めといてね」と言われても、逆さに振ったって1円も出ないのだ。

なのでこの43,200円もの金が浮くのは天啓に感じていた。

「老後資金も確保しながら、税金も抑えらるなんて最高やん!」

東京に越してから控えていた関西弁が出るくらいマスヲの心は踊っていた。

早速、アナゴくんが勧めてくれたネット証券にアカウントを作成し、iDeCoの資料を請求した。

数日後、そのネット証券から前面に堂々と「iDeCoのご案内」と印刷された角2封筒が届いた。

「マスヲくん」

声をかけられた。

同居している妻の父、つまり義父のナミペイだ。

「それはiDeCoかね?」

「はい、今少し検討してまして……」

マスヲはやる気満々であったが、それを明言するのは避けた。

妻の了承は得ておらず家庭内の合意形成がまだだったからだ。

同居はしているが義父とは家計は別なので何ら口出しされる理由はないはずだが、ナミペイも地方公務員である。

自分がiDeCoを始めることにより、ナミペイの家計にも影響が出るかもしれない。

とにかく波風を立てないことが保身につながる。

マスヲには、そういった地方公務員としての「正しいあり方」が身についていた。

iDeCoのことは調べたのかね?」

「ええ、同僚のアナゴくんがやってましてね、詳しく教えてくれたんですよ」

「受け取り方についても?」

「退職所得控除のことですか?」

マスヲはドヤ顔で答えた。

俺は知っている。

この年寄りよりも情報通だ、情報強者だ、マスヲのそんな驕りの切れ端がわずかに漏れ出た。

「ほう。少しは調べたようじゃな。では、退職所得控除の計算方法は知っておるのかね?」

「え?……あー、そこまでは」

「……本当にiDeCoが退職所得控除の対象になるのかね?」

ナミペイの眼鏡が光り、鼻息で髭が揺れ、口角が不敵に上がった。

 すみません、前回から引き続きマスヲさんの物語が進行しています。

奥さんのお父さんも地方公務員なんかーい!と思われた方もおられると思いますが、これが案外少なくないんですね。

公務員一家というのは珍しくなくて、職場で出会って結婚したら、相手の家族がみんな公務員というケースは割とあることなんです。

iDeCoが「本当に退職所得控除の対象になるのか?」

iDeCoの受け取り方

ナミペイさんはiDeCoの受け取り方に言及してきました。

マスヲさんもアナゴさんから話を聞いていたので、すかさず「退職所得控除のことですか?」と応答していました。

ですが、ナミペイさんから退職所得控除の計算方法は知っているかと切り返され、マスヲさんは言葉に詰まってしまいます。

さらにiDeCoが「本当に退職所得控除の対象になるのか?」とさらに追い打ちをかけられてしまいました。

前回ご説明したとおり、iDeCoには受け取り方が以下の3パターンがありました。

  1. 定期的に受け取る(年金)
  2. 一括で受け取る(一時金)
  3. 1.と2.を組み合わせて受け取る

このうち、2.一括で受け取る方法が退職金のような受け取り方で、退職所得控除の対象になるとご紹介しました。

また、退職所得控除は控除額が大きいとも説明しました。

(話が煩雑になるのを避けるため、これからはiDeCoの受け取りを一時金で受け取ることを前提として話を進めます。)

では、ナミペイさんがおっしゃる退職所得控除の計算とはどのようなものなんでしょうか?

退職所得控除の計算方法

国税庁のサイトから引用します。

 退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額

(略)

退職所得控除額の計算の表

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年)

(略) 

(例)

  1. 1 勤続年数が10年2ヶ月の人の場合の退職所得控除額
    勤続年数は11年になります。
    (端数の2ヶ月は1年に切上げ)
    40万円×(勤続年数)=40万円×11年=440万円
  2. 2 勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額
    800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円

  (出典:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁

例えば、マスヲさんが「退職所得控除」で検索して、一番にヒットしたのが国税庁のこんなページで、がんばって読み始めたところで、すぐには理解できませんよね。

まずわかりにくいのはこの式ですね。

(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額

カッコから先に計算するというルールは小学校で習いました。

この式にはカッコの中にまたカッコがあります。

収入金額(源泉徴収される前の金額)

この部分ですね。

これは単なる言い換えなのでカッコ内は省略しますね。

(収入金額 - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額

「収入金額」は、要するに退職金やiDeCoを一括で受け取ったときの金額のことです。

「退職所得控除額」については後述します。

で、収入金額から退職所得控除額を差し引いて半分にした額が、「退職所得の金額」と言ってますね。

この式は「退職所得の金額」を求める式だったんですね。

「退職所得の金額って何ですか?」というマスヲさんの声が聞こえそうです。

「僕が知りたいのは税額なんです。退職金からどれだけ税金で持って行かれるのかが知りたいんです。」

という声も聞こえてきそうですね。

税額を算出するには、「退職所得の金額」に税率をかけて控除額を引きます。

税率や控除額は「退職所得の金額」に応じて数字が変わります。

その税額表が下記のとおりです。

令和2年分所得税の税額表〔求める税額=A×B-C〕

A 課税退職所得金額 B 税率 C 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

 (出典:退職金と税|国税庁

具体例を挙げて当てはめてみましょう。

  • マスヲさんが60歳になって退職金1,000万円受け取ったとします。
  • 退職所得控除額が400万円だったとします。
  • この場合、退職所得の金額は
    (1,000万円-400万円)× 1/2 =300万円
  • 税額表より、税率10% 控除額97,500円なので、
    所得税額=300万円×10%-97,500円=202,500円
  • 住民税が10%ととするとは
    住民税額=300万円×10%=300,000円
  • 税額合計502,500円

こんな感じですね。

次に「退職所得控除額」です。

こちらは勤続年数で決まります。

勤続年数が1年につき、40万円が控除されます。

勤続年数が20年を超えた分については控除額が増額して70万円になります。

このことを示しているのが、先に引用した「退職所得控除額の計算の表」ですね。

例えば、勤続年数が10年であれば、

  • 退職所得控除額=40万円×10年=400万円

となります。

次に、勤続年数が多い場合、例えば大卒で22歳から60歳まで38年勤務した場合を考えてみましょう。

  • 退職所得控除額=800万円+70万円×18年=2,060万円

このとき退職金が1,000万円だったら、

  • 退職所得の金額=(1,000万円-2,060万円)× 1/2 =-1,060万円???

退職所得の金額がマイナスになってしまいましたね。

退職所得控除額が大きくて、収入金額(この場合、退職金)を超える場合、税金はかかりません。

新卒で入社して、その後転職せずそのまま定年を迎えるのが、税金的には非常に有利になります。

iDeCoが退職所得控除の対象にならないとは?

ナミペイさんが、「iDeCoが本当に退職所得控除されるのか」とマスヲさんに問うてましたね。

iDeCoは退職所得控除の対象となるはずなのに一体どういう意味なんでしょうか?

地方公務員の退職金の平均をご存知でしょうか?

退職理由によっても退職金額は変わりますが、定年退職の平均は以下のとおりです。

◆60歳定年退職者の退職金は平均2100万円前後
では、60歳で定年退職した人だと、退職手当の平均支給額はどれくらいでしょうか。こちらも職種別に見てみましょう。( )内は最高額を支給した地方公共団体名と金額です。

都道府県(47団体)
・全職種:約2211万円(静岡県:約2295万円)
・一般職員:約2160万円(静岡県:約2293万円)
・一般職員のうち一般行政職:約2165万円(静岡県:約2349万円)
・教育公務員:約2237万円(三重県:約2319万円)
・警察職:約2202万円(東京都:約2306万円)

●指定都市(20団体)
・全職種:約2163万円(堺市:2232万円)
・一般職員:約2107万円(千葉市:2203万円)
・一般職員のうち一般行政職:約2247万円(さいたま市:2439万円)
・教育公務員:約2243万円(名古屋市:約2362万円)

●市区町村
・全職種(1248団体):約2016万円(千葉県大網白里市:2480万円)
・一般職員(1235団体):約2016万円(千葉県大網白里市:2480万円)
・一般職員のうち一般行政職(1059団体):約2160万円(東京都羽村市:2630万円)
・教育公務員(37団体):約2147万円(兵庫県姫路市:2494万円)

(出典:地方公務員の退職金、平均でいくら? | マイナビニュース

自治体によって上下はするでしょうが、平均は2,100万円前後と書かれています。

先の例にも挙げた「大卒で現役で入社して、その後転職せずそのまま定年を迎えた場合」、つまり勤務年数38年で退職所得控除額は2,060万円でした。

2,100万円の退職金を受け取ったら、その時点で退職所得控除額を超えてしまうんですね。

さらにiDeCoで500万円受け取ったとしても退職所得控除の枠はすでに使い切っています。

退職金が1,000万円の場合と比較してみましょう。

共通の条件はこちらです。

  • iDeCoを一括で550万円受け取る。
  • 勤務年数は38年。
  • 税額は税額表から算出する。
退職金 2,100万円 1,000万円
iDeCo 550万円 550万円
退職所得控除額 2,060万円 2,060万円
退職所得の金額 295万円 0
所得税 10% -
控除額 97,500円 -
所得税 197,500円 0
住民税税率 10% 0
住民税額 295,000円 0
税額 492,500円 0

約50万円の差がつきました^^

iDeCoの一括受取が550万円というのは、公務員の上限である毎月1万2,000円を30年間積み立てて年5%で運用した場合の概算金額です。

一方、民間の場合、iDeCoの掛金の上限は2万3,000円になります。

退職金1,000万円のケースは民間を想定していますので、iDeCoの運用条件を下記のとおりとした場合、受取額は約1,055万円になります。

  • 掛金2万3,000円/月
  • 運用期間30年
  • 年率5%

iDeCoの受取額が1,055万円であったとしても、

退職所得の金額=1,000万円+1,055万円=2,055万円

なので、退職所得控除額2,060万円を下回ります。

iDeCoの受取額が1,000万円を超えても税金が0円なんですね。

言いたいことは、それくらい退職所得控除は大きいものだということです。

一般的に「iDeCoの受け取りのときは、退職所得控除が受けられます」というのは、こういった民間のケースを想定しているのであって、地方公務員の場合には当てはまらないことが多いと言えます。

iDeCoの3つの税優遇のうち1つが受けられない

iDeCoのメリットである税優遇は3つありました。

  • 掛金の所得控除
  • 運用益が非課税
  • 受取時の退職所得控除

地方公務員の場合、このうちのひとつ「受取時の退職所得控除」が受けられない人が多そうだということをこれまで検証してきました。

退職金だけで退職所得控除を超えてしまっているので、さらにiDeCoを受け取っても、iDeCo分は税金を支払うことになるというのが、ナミペイさんの意図するところだったんです。

掛金のときに所得税控除、運用益で非課税と税金の優遇を受けたけど、最後の最後には退職所得として税金を支払うことになるということですね。

結局のところ、地方公務員はiDeCoに加入すべき?

iDeCoの3つのメリットのうち1つは享受できなさそうですが、2つは残っています。

メリットは薄まりましたが、加入した方がお得なんでしょうか?

冒頭の物語の中でマスヲさんは、アナゴさんに計算してもらって年間「43,200円 お得である」ということを聞いています。

これが本当なら50万円の税金は12年で取り戻せます。

実際、年間「43,200円 お得」と言うのも現実離れした数字ではありません。

アナゴさんは税金が3割と計算していましたが、3割というのはどこから来た数字なんでしょうか?

所得税の税率は、退職所得の税率を確認した税額表と同じですので、所得が3,300,000円から6,949,000円までであれば20%になります。(マスヲさんの年間所得は400~500万円程度を想定しています。)

このほかに住民税が10%かかります。

合わせて30%、この数字ですね。

iDeCoの年間の掛金144,000円が控除されるとしたら、税額でいうと144,000円の30%が差し引かれることになります。

アナゴさんが計算してくれた144,000円×0.3=43,200円という数字の根拠がこれですね。

年末調整などで保険料も控除の対象になってますが、保険料の控除額の上限って4~5万円なんですよね。

それに比べたら144,000円の控除がいかに大きいか理解していただけるかと思います。

結論としては、「退職所得控除は受けられなくても、iDeCoに加入した方がお得だ」と言うことになります。

 

ではまた次回この続きをお話ししたいと思います。

長々となりましたが、お付き合いくださいましてありがとうございました。