【レビュー】大阪歴史博物館「あやしい絵展」
先日、大阪歴史博物館「あやしい絵展」を見に行きましたので、その感想を綴りたいと思います。
1.展覧会の主旨
「あやしい」という言葉には、妖しい、怪しい、奇しいなど、さまざまな漢字を当てはめることができます。
いずれにも共通するのが、いわゆる「キレイ」「見ていて心地よい」とは少し違う、神秘的で不可思議、奇怪な様子を表していることです。
グロテスク、エロティック、退廃的、神秘的、ミステリアス・・・
そういった「美しい」だけでは括ることのできない魅力を持つ作品を、本展では「あやしい絵」としてご紹介します。
(出典:あやしい絵展 公式ホームページ)
展覧会の主旨自体がもう「あやしい」ですね。
タイトルからすると軽薄な展覧会のような印象を受けました。
でも違いました。
デパートでよく行われる入場無料の某キャラクターの展覧会で、結局物販が目的のものと同質の展覧会かと当初こそ思いましたが、全然違いました!
むしろ硬派な学問的に王道の展覧会で、とても満足のゆく展示でした。
江戸時代末から大正時代にかけて「あやしい」絵って結構残ってる印象がありましたね。
例えば「グロい」作品ってこの時代に割とウケてたようです。
岩佐又兵衛なんかも江戸時代末ごろではなかったでしょうか。
この時代に限らずグロいものはウケてるような気もしますが。
また、展覧会中に触れているように、女性像についても、ただ美しいだけの女性像から、怖い女性など生々しい女性像が描かれるようになり、その背景にも言及されています。
2.展示作品
浮世絵
月岡芳年などグロい浮世絵が堪能できます!
浮世絵のすぐ上にガラスかアクリルかのカバーをかけただけの展示なので、圧倒的に作品が近いです。
こんなに間近に浮世絵を見たことないです。
浮世絵は江戸時代の庶民が手に取って鑑賞した作品ですので、その感覚に近いでしょう。
多色刷りの技術を思い切り目の当たりにしましたね。
月岡芳年の作品は、まあ血が流れるんですが、血の流れ具合がリアル。
版画でこんなに表現できるなんて、ただならぬ技術です。
ゴッホが浮世絵に影響を受けたというのもむべなるかなという感じです。
挿絵、出版美術
挿絵などの出版美術の展示も多数ありました。
こういった王道の展覧会では、出版美術がメインに来ることは少ないですが、この展覧会では多く出品され、じっくり鑑賞するができました。
藤島武二って、与謝野晶子『みだれ髪』の表紙を手がけていたんですね!
知りませんでした。
大正時代のデザインてめちゃくちゃキュートですよ。
ぜひたくさんの人に見てほしいです。
鏑木清方、上村松園、北野恒富
この作家に代表される大正時代の日本画は、個人的に甘ったるい感じがして苦手だったんです。
実際見たらとても良かったです!
図版の写真を見ただけで判断してはいけませんね。
和洋折衷というか、和と洋がせめぎ合って昇華して作品に表れてると言いますか、時代が反映されているようで、他の時代には見られない表現でした。
少し戻れば江戸時代、少し進めば西洋寄りという感じで、ちょうどその間のちょうどいい感じです。
中でも、鏑木清方「妖北野恒富「道行」が個人的お気に入りです。
3.まとめ
私が行ったのは大阪歴史博物館だったので、歴史博物館では美術の展示は弱いと思ってましたが、そんなことはありませんでした。
それもそのはずで、もともと東京国立近代美術館の企画の展覧会だったんですね。
義務教育の日本史でもそうですが、美術史で明治以降ってあまり取り扱わないんですよね。
明治以降は今につながって生々しいためか、それとも今の教育が明治を発端にしているので、それ以前を取り扱うものとしているためか、定かではありませんが。
何にせよ、ちょっと避けていた時代の少し片隅に残っていたものたちに焦点が当てられていて興味深かったです。
私の大正時代の日本画の苦手意識も覆ったので、とても良い展覧会と思いました。